制作事例
「食べること」は単なる「行動」にとどまらない。喜びの源と同時に自分の体をコントロールする道具。人とつながる手段である一方、孤独な楽しみ。自由気ままになれるものでもあり、不安を生み出すもの…。食と私たちの関係はさまざまな顔を持つ。感情と密に結びつき、社会的かつ個人的な歴史を照らし出すことにもできる。しかしこの食との多様な関係は一体どこから来ているのか?
カトリーヌ・ロングリーは子供の頃太っていた…。今でもぽっちゃりとしていた幼い頃の亡霊につきまとわれながら、食べ物との関係は支配と喜びのはざまを行き来している。日本でのアーティストレジデンスに参加しながらロングリーは、年齢、背景、摂食障害の経験など異なる10人に、食と身体との関係をテーマにインタビューを行い、使い捨てカメラで自分と食の関係を撮影するよう依頼した。こうして生まれた写真集には10人の極めて個人的かつ、世界中につながる食の物語を読むことができる。
Yukiが少しずつ拒食症に陥っていき最後には液体しか飲み込めなくなったこと。Renが母親の弁当を鎧にして外界のプレッシャーから身を守ったこと。健康診断で「メタボ」と判定されたKenichiがその後どう対処していったか。兄弟と料理をすることで亡くなった母を思い出せるMina。過食症であることを20年以上周囲に隠してきたRika。
アートと人類学が交差するところに位置するこの写真集は、食と身体の関係がどこから起源し、影響しているのかを私たちに教え、深い問いを投げかけてくる。
カトリーヌ・ロングリー ベルギー/ ブリュッセルを拠点に活動するビジュアル・アーティスト。写真、コミュニケーション、人類学、それぞれの専門知識を活かした作品制作を行う。毎年数ヶ月間滞在する日本とは強い絆を紡ぎ、日本の社会的課題に焦点を当てた作品も数多い。世界中で作品展示経験を持ち、これまでに3冊の写真集を出版している。ロングリーの表現活動は、他者への純粋な好奇心と、人々が持ち合わせる個人的な物語への探究心を核に展開されている。
発行:株式会社スリーブック 発行年:2025 https://www.threebooks-publishing.com/totellmyrealintentions