印刷職人のしごとばTOPICS

カテゴリ:印刷作品アーカイブ

百の手すさび -近代の茶杓と数寄者往来-

2018.10.26  印刷作品アーカイブ, 展覧会・イベント情報 

10月20日よりMIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市)にて、
秋季特別展『百(もも)の手すさび-近代の茶杓と数寄者往来-』が開催中です

展覧会の場ではお茶碗や釜に比べ、注目を浴びることの少ない「茶杓」。
茶器から抹茶をすくい上げる匙のことで、お茶席を作り上げる上では
必要不可欠な茶道具たちの大切な一員です。

近代の日本には、政界や財界で活躍する一方で
美術工芸品を愛し、自身の蒐集品を使って茶会を催すなど
茶人としての一面も併せ持っていた「近代数寄者」と
呼ばれる人々がいました。
彼らを中心とした、茶を愛する文化人たちが
自らの手で仕上げた100点を超える茶杓が一堂に会します。

 

今回サンエムカラーは、当展覧会に合わせて淡交社様が
出版された図録の印刷を担当させていただきました。

 

茶杓が中心となる展覧会は初めてで、
原寸で図版を掲載したこの図録も資料として価値のあるものになりました。

図版だけでなく、素材や形式の歴史的な移り変わりや
部分の名称など、茶杓の基礎知識も満載です。

著名な文豪や画家、陶芸家が手がけた茶杓も
多数展示され、彼らの本業である小説や絵画・陶器と
茶杓の個性を見比べることができます。

この図録は、少しだけ印刷の仕様を変えて書店でも販売されます。


左が会場用、右が書店販売用です。
書店でも映えるように、表紙の印刷を少し濃くしました。

残念ながら展覧会を見に行けない…という
茶杓ファンのみなさまは、ぜひお近くの書店で
探してみてください。
まだ茶杓ファンではないみなさまも、
細くて小さい匙に広がる世界を
じっくり楽しむまたとない機会ですので、
足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

「百(もも)の手すさび -近代の茶杓と数寄者往来-」

会期:開催中〜12月2日(日)
会場:MIHO MUSEUM
休館日:月曜日
入場料:大人1,100円 大・高校生800円 中・小学生300円

 

公式図録

発行:淡交社
仕様:H302×W216  400頁
定価:2,778円+税

写真集『Displaced People』

2018.9.14  印刷作品アーカイブ 

このブログでも度々お伝えしてきたように、
サンエムカラーでは写真家の方の少部数写真集の
制作に力を入れています。

先日完成した写真集『Displaced People』は、
少し変わった理由で少部数での出版となりました。

この写真集に収められているのは、
バングラディシュからミャンマーへ避難を余儀なくされた
ロヒンギャと呼ばれる人々です。
ニュースなどで名前を耳にしたことのある方も多いでしょう。

作者・写真家の谷口詠治さんは、「世界の問題」を
テーマに、アジアをはじめとした貧困層の人々に
取材した写真を撮影されています。
記念すべき初めての写真集の主役に選ばれたのが、
このロヒンギャの人々です。

 

今回谷口さんは、撮影に協力してくれたロヒンギャの人々や
現地在住の日本人の方に、感謝の気持ちを込めて
贈るために少部数で写真集を作ることにしたと
話してくださいました。
そんな大切な写真集の印刷をおまかせいただけるのは
嬉しいものです。

 

打ち合せを繰り返し、ご満足いただける一冊に
仕上がりました。

写真集の完成後、谷口さんは本を携えて
ロヒンギャの人々の元へ出発されました。

 

作品集を作りたい理由は様々あると思いますが、
「あの人に作品を見せたいから作る」というような
本づくりもあっていいと思います。
そんな時は、遠慮なくサンエムカラーにご相談ください。

 

 

谷口さんのwebサイトはこちら

 

ヨシダナギBEST作品集『HEROES』

2018.5.9  印刷作品アーカイブ 

4月19日の西武渋谷店・ヨシダナギさんの展覧会スタートから
早くも3週間が経とうとしています。
昨日(5月8日)も会場ではサイン会が開催されたようで、
盛り上がりは京都へもビシビシ伝わってきています。

そこで今回は、改めて最新作品集『HEROES』の
ご紹介をさせていただきたいと思います!

 

この度新たに誕生した写真集『HEROES』です。

表紙を飾るのは、アマゾンに住むエナウェネ・ナウェ族の青年。

画像からはわかりにくいですが、B4(267×364)サイズで
抜群の迫力です。

 

前作『SURI COLLECTION』に登場したスリ族、
表紙のエナウェネ・ナウェ族だけでなく、
アフリカ・アジアを始めとする世界各地の
民族それぞれの装いが、見開きいっぱいに迫ります。

 

幼いヨシダさんの心を掴んだアフリカの民族を
原点として、彼らは今に至るまで彼女にとって、まさにHEROESであり続ける存在です。

その姿は、美しさだけでなく、最高の敬意と憧れを以って
撮影に挑むヨシダさんにしか捉えられない
親しみと誇りに満ちています。

 

ヨシダさんの写真のインパクトと魅力がぎゅっと詰まった一冊、
ぜひお近くの書店でご覧になってください!

 

『HEORES』

写真・文:ヨシダナギ
発行:ライツ社
仕様:B4判・128頁
定価:11,111円(税抜)

 

 

加藤 孝  写真集『日々 “HIBI” TSUKIJI MARKET PHOTOGRAPH TAKASHI KATO』

2017.11.25  印刷作品アーカイブ 

デザイン情報サイト「デザログ」の8月30日付の記事にて、
弊社で印刷を担当いたしました加藤 孝  写真集
『日々 “HIBI” TSUKIJI MARKET PHOTOGRAPH TAKASHI KATO』
について深く取り上げていただきました。

表紙の親しみやすい「日々」の文字に愛着が湧きます。

本文の文字組みや、ページネーションなど、隅から隅まで
こだわり抜かれたデザインが光る1冊です。

記事にもあるように、
『日々 “HIBI” TSUKIJI MARKET PHOTOGRAPH TAKASHI KATO』(以下『日々』)の
こだわりポイントの中には、サンエムカラーが独自に開発した印刷技法「グラ・セット・エフエム®︎」
を使って印刷されているということも挙げられます。

ここでは以前、別の製品の紹介記事にてこの技法に触れたのですが、
この機会に改めて解説してみたいと思います。

 

グラ・セット・エフエム®︎の一番の特徴は、グラビア印刷の
繊細な表現力をオフセットで再現する点にあります。

「グラビア印刷」は、金属の版に細かな凹凸をつけ
版の凹んだ部分(セル)に詰めたインキを紙に刷り取る方式です。
微細な濃淡が表現できる上に、厚みを持ったインキの質感が
出ることで知られている方法です。

このグラビア印刷の質感を、
現代の主流であるオフセット印刷、
その中でもランダムな網点でなめらかな色の変化を実現する
FMスクリーンを使って再現するのがグラ・セット・エフエム®︎です。
サンエムカラーが独自に研究・開発いたしました。
緻密な色の移り変わりに加え、
UVインキによって可能になったオフセットでのインキの厚盛りで
濃密なモノクロの世界が広がります。

 

この技法を世界で初めて用いて印刷されたのが、
細江英公《二十一世紀版 薔薇刑》(以下、『薔薇刑』)です。
(コチラから《二十一世紀版 薔薇刑》についての過去記事をご覧いただけます。)

 

『日々』は『薔薇刑』に続く、グラ・セット・エフエム®︎による印刷の2例目となります。

この上なく引き締まった漆黒の表現が、画像でもお分かりいただけるかと思います。
グラ・セット・エフエム®︎を用いたことに加え、スミ2色にグレーを重ね、
さらには仕上げのグロスニスにもスミを混ぜるなど、とにかく
黒の表現にとことんこだわりました。
画像では伝わりづらいですが、印刷面を触るとかすかにインキの凹凸が感じられるほどです。

 

デザイン、印刷技法だけでなく、現場でのインキの調整、製本に至るまで
『日々』には本当にさまざまな意匠が凝らされています。

「デザログ」にて紹介されている展覧会は残念ながら終わってしまっていますが、
ぜひ記事をお読みいただき、また機会があれば手に取ってインキの
厚みをじかに感じていただきたいと思います。

—————————————————————————————————————

 

加藤 孝  写真集『日々 “HIBI” TSUKIJI MARKET PHOTOGRAPH TAKASHI KATO』

著者:加藤 孝
企画:廣岡好和
出版社:玄光社
アートディレクション:髙谷 廉
デザイン:岩松亮太
仕様:260×260mm・ハードカバー・104頁

 

 

石山寺所蔵「紫式部聖像」の複製画が初公開!

2017.9.27  印刷作品アーカイブ, 展覧会・イベント情報 

紫式部が源氏物語を書き起こした地とされる石山寺の「秋月祭」に伴い、当社で作成いたしました「紫式部聖像」の複製画が10月4日(水)・5日(木)2日間特別に公開されます。

 

原画は、190×140 cmの大作で室町時代に描かれた日本最古の紫式部の肖像画です。紫式部のまわりの微かな線は、源氏物語の場面と漢文が書かれていると最近のX線調査で判明しています。

 

 

今回サンエムカラーが手がけた複製画は、細かなディテール再現と色の忠実さだけでなく、岩絵の具の盛り上がりや胡粉の剥落などの立体感まで忠実に再現し、また、原画では確認しづらい場面と漢文を見やすく調整しています。その実現は、弊社が春に導入いたしました〈ギガピクセル・アートスキャナ〉を用い、色やディテールを高解像にデジタル入力し、出力は凹凸までも再現する〈エクセル・ピコ・アート®〉の技術によって忠実に再現されました。大型作品でも高解像な撮影と凹凸を再現する〈エクセル・ピコ・アート®〉によって、これまでに無いリアリティの強い複製画となっております。

 

複製画の特別公開については石山寺の公式ホームページ読売新聞にも紹介されています。

 

ぜひ足を運び、日本の歴史と最新技術の融合を直に感じてください!