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カテゴリ:グッズができるまで

最古にして最新の和傘

2020.6.25  お知らせ, グッズができるまで, サンエムなら出来ちゃいます! 

ハイブランドも注目する日本最古の和傘屋 「辻倉」
圧倒的な品質と個性豊かなテキスタイルで染め業界を牽引し続けている 「岡重」

二つは京都を代表するブランドです。
今回サンエムカラーは、上記の2社と共に2つの和傘を制作しました。
弊社のInstagramにて既に少し紹介していますが、今回はブログにてその和傘を詳しくご紹介いたします。岡重と辻倉の和傘

最古の和傘に最新の印刷を組み合わせるという挑戦

和傘には、

  1. 和紙を使う事
  2. 多くの閉じ開きに耐えられること
  3. 雨・風・日光に晒されても耐えられること

これらを想定して設計するために、職人の知恵と技術で複雑なテキスタイルやイラストを施す創意工夫をしてきたという歴史があります。
その歴史の中にはもちろん印刷の試みもありましたが、印刷では耐久性も印刷そのもののクオリティも足りないどころか、そもそも手漉き和紙への印刷が不可能に近く、全く実用的ではないというのが結論でした。

我々サンエムカラーはそこにブレイクスルーを生むべく「印刷」に取り組みました。

弊社のカサネグラフィカでは、従来のUV印刷方式の限界を超えた、豊かな発色と精細な描写が実現可能です。インクの耐久性も当然問題なし。
ハイクラスの印刷機とハイレベルな製版技術、それらを組み合わせて、ハンドメイドでは実現困難な「高品質な印刷と生産性の両立」を目標にチームは試作を重ねました。

そして完成したのが

浅井コレクションよりご提供いただいた、二代歌川国貞の『助六郭の花見時』という浮世絵をモチーフにデザイン・印刷した傘と、

岡重様からお借りした「鯛づくし文様」をサンエムにて印刷し、辻倉様に雨傘として加工していただいた鯛づくし文様傘、

この2本です。
岡重と辻倉の和傘傘を載せている機械はこの傘の制作に使用した印刷機です。実はとても繊細な機械ですが、和傘は非常に軽いため載せても全く問題ありません。

岡重と辻倉の和傘 辻倉の助六和傘

表面が美しいのはもちろんのこと、裏面から見ても非常に美しいのが和傘の特徴です。
特に雨傘は、雨水を防ぐための油を染み込ませる工程で半透明の仕上りとなり、独特の雰囲気には息を呑むほどです。

「鯛ずくし文様」はそんな防水加工のおかげで、仄かで上品な透け具合になりました。機会があればぜひ一度、辻倉様にて本物の和傘をご覧ください。岡重と辻倉の和傘

グッズができるまで③

2018.2.22  グッズができるまで 

サンエムカラーが印刷を駆使して作る
展覧会グッズをご紹介する連載「グッズができるまで」。

①・②ではグッズの制作過程をご紹介していましたが、
実はグッズの完成を記事にまとめる間も無く、すでに展覧会が開催中です!

なので、今回は展覧会のPRも兼ねて、完成したグッズの
ご紹介を一挙にしたいと思います。

 

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現在、東京・千代田区のkanzan galleryで開催中の
ヨシダナギさんの個展『Tribe Walk』。

民族写真家としては言うまでもなく、テレビ「クレイジージャーニー」への出演、弊社で
印刷を担当いたしました作品集『SURI COLLECTION』など、
幅広い活動を展開されるヨシダさん。
昨年開かれた写真展『HEROS』が記憶に新しい方も
いらっしゃるかもしれません。

会期も半ばをかなり過ぎていますが…ギャラリーの様子をご紹介いたします。

       

今回の展示の目玉となるのは、ギャラリー内に設置されたスクリーン。
展覧会と同じ「Tribe Walk」と題されたこの作品は、
ヨシダさんが旅の中で体験した、少数民族との交流、その空気を
追体験できるデジタルインスタレーションです。

見て感じて楽しむだけでなく、写真撮影が可能なので、
作品から様々な民族が自慢のおしゃれをして画面に登場する瞬間は
彼らとツーショットを撮るチャンスです!カメラをお忘れなく。

 


▲会期中にヨシダさんがいらっしゃった時の写真です。

ヨシダさんの在廊中にグッズを買われた方には、ヨシダさんのサインが!

ここで、どんなグッズが出来上がったのか、ご紹介していきます。

上の写真でサインをされているのが、ヨシダさんの名言つき
日めくりカレンダーです。「グッズができるまで②」で印刷していたものです。

  

 


▲壁掛けにもなります。

 

 

続いて、「グッズができるまで①」で校正をしていたブロックメモです。

 

右から、「スリ族」と「エナウェナウェ族」の2種類。

  

表紙カバーの白インキはこんな感じで仕上がりました。
模様は、表紙に使っている民族のボディペイントを
それぞれモチーフにしています。

 

制作工程をブログでお伝えしていないグッズもいくつかご紹介します。
A5ポケットクリアファイルは、ブロックメモと同じ
民族の違うショットを使って仕上げました。

衣装の色合いからイメージカラーをそれぞれオレンジと水色に設定してデザインをしました。
A5サイズと小ぶりながら、存在感のある仕上がりなので、ぜひ実物をご覧いただきたいと思います。

 

       
▲中のポケット部分にもおしゃれをした民族が立っています。

 

今回のグッズラインナップの中でも異色を放つのが、
スリ族フェイスパック『Suri Pack』です。

  

スリ族の特別なお化粧をモチーフにした、デザインフェイスパック。
これであなたもスリ族になれる?かも。

フェイスパックも、化粧水に浸す前は紙なので、柄がついたものは
「印刷物」ということになります。少し意外に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

肌につけるものという性質上、特殊なインキが必要なため
この商品は弊社印刷のものではないのですが、企画・デザインはサンエムカラーで
担当いたしました。

 

kanzan galleryでの展示は今月25日で終わってしまうのですが、今年は他にも
ナギさんの展覧会がいっぱいです。こちらでも詳細をお伝えしてまいりますので、
チェックをお願いいたします!

 

 

グッズができるまで②

2018.1.15  グッズができるまで 

サンエムカラーでは、展覧会オリジナルグッズを
はじめとしたグッズ制作を展開しています。

そんなグッズの中でも、弊社で企画・デザインから製作までを
担当している製品の製造過程を通じて、「こんなものも印刷で作れるんだ」
ということや、どんなものにどんな印刷ができるか・どんな加工ができるかを
知り尽くした印刷会社ならではのグッズ提案の幅をお伝えする連載「グッズができるまで」。

2回目の今回は、前回校正の様子をお伝えした
写真家・ヨシダナギさんの個展グッズの本刷り現場を
お送りします。

 


 

第一回目では、メモ帳の紙部分と表紙にかぶせる
ペット素材への校正を行いました。

今日本刷りが行われるのは、31日分のページで
毎月毎年使えるリング式の日めくりカレンダーです。
台紙、本文の裏と表の3種類を印刷します。
数日前に、色校正を行いましたので今回は本刷になります。

本刷りの流れは書籍と同じで、見本を確認しながら
刷り、色が良くなければインキの調節をしてまた刷り…というのを
理想の色が決まるまで繰り返します。
前日の色校正に様々な指示を書き込んでいるので
それが忠実に合って入るかを確認します。


▲カレンダーの校正です。
本文には31種類の写真と、ヨシダさんの旅や生き方にまつわる
名言が収められています。くすっと笑えて元気がでる言葉たちです!

修正指示が書き込まれたこの校正が、今日の見本になります。
書かれた指示は画像のデータ自体に加える修正の指示ですが、
本刷りをしてみてこの修正が正しく反映されているかを
確認するのに使います。

ここに至るまで、各画像の色の補正や全体の雰囲気の統一など
データだけで何回か修正を行いました。

 

早速、台紙の本刷り一回目が上がったようです。
色味の確認をします。
台紙は本文の修正済み画像を縮小してレイアウトしているので
方向性があっているか本文の色校正とも見比べます。

 


▲印刷現場では、網点などを見るために頻繁にルーペを
使います。写真はトンボ(複数の版を印刷する際にずれないように
するための目印)を確認している所です。刷りはじめの作業です。
トンボがずれている=版同士の印刷がずれていると、網点の重なりの
関係で色味も変わるため、確認は大切な作業です。

少し調整が必要なようなので、刷りなおします。
今回はこの作業を3回繰り返しました。
5号機担当の山内さんがばっちり合わせてくれました。

1冊の写真集が完成するまで」ではお客様の立会いのもと
行われる本刷りの様子をお伝えしました。
しかし、全てのお客様に直接現場をご覧いただくわけにはいかないので、
多くの場合は今回のように立会いなしの印刷になります。

ここにいないお客様の完成イメージを営業、画像修正から印刷工場まで
間違いなく伝えるコミュニケーションが、納得の印刷を作ります。

とはいえ、その日の天気など、微妙な変化で印刷は変わってくるので、
いい色に仕上がるまで何回も刷り直しをすることも多々あります。

今回のカレンダーも、複数回の刷り直しを経て、本番の印刷となりました。

 


▲これは本文の刷り取りです。写真右上の機械は、
色を見るための機械です。
最後に色を見極めるのは人の目ですが、数値化して判断することも大切です。

 

ここではまだ詳しくお伝えしませんが、色の精彩さだけでなく、
毎日のメッセージも含めて、魅力的なカレンダーに仕上がりそうな予感です。

 

本刷りが終わり、このあとカレンダーの紙は断裁、加工と工程を進んでいきます。

 

 


 

なんだかんだで展覧会まで半月ほど、先に刷り上ったグッズは、
もう加工も終わって完成見本が届いているものもあります。

次回もまた、何か新しいグッズをご紹介できるかもしれません。

 

次回の更新をお楽しみに!

 

 

 

グッズができるまで ①

2018.1.5  グッズができるまで 

サンエムカラーでは、展覧会オリジナルグッズをはじめとした
グッズ制作を展開しています。

印刷で出来るグッズといえば、どんなものが思い浮かぶでしょうか。
ポストカード、ノート、メモ帳…などなど、弊社オンラインショップで
取り扱っているアイテムは、もちろん全て印刷で作られています。

中にはクリアファイル、マグカップなど、「印刷物」というイメージが
薄いものもあるのではないでしょうか。
そういった、紙に印刷できるグッズ以外にも
多く企画・制作を行っています。

今回は、「1冊の写真集ができるまで」に続きまして、
「グッズができるまで」と題して、グッズ制作の様子を
お伝えしていきたいと思います。

 

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現在制作が進行しているのは、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)が
大人気発売中の写真家、ヨシダナギさんのグッズです。

『SURI COLLECTION』の印刷を担当させていただいたり、
秋に開催をお伝えしました「サプール写真展」での
トークイベントにも参加されるなど、様々な場面で一緒に
お仕事をさせていただいています。

そのご縁で、今回は2018年2月に開催予定の写真展『Tribe Walk』で
販売予定のグッズを企画・制作しております(展覧会については追って詳細を告知させていただきます!)。
企画・デザインは、弊社企画・制作の部署にて担当させていただきました。

2月の開催ですので、順次各グッズのデザインが決まり、校正が印刷されている段階です。

 

早速、校正中の工場よりお届けします。

 

今校正しているのは、2種類のメモ帳です。
柄は、写真右から、表紙、本文1、本文2、本文3の
4種が付け合わせの状態です。
本来は表紙と本文の紙は変えますが、今回は
校正のため、同版・紙替えで校正を進めます。

グッズを印刷するときも、書籍と同じように大きな紙に付け合わせて印刷します。

 

今回の校正では、同じ柄の中で濃度やコントラストに
差をつけたデータを2種用意して、最終的にどのデータを使うかを
実際に印刷されたものや、作家さん、デザイナーの意見を確認して
校了を目指します。


▲『SURI COLLECTION』を色見本にして色を合わせていきます。
表紙はコート系の色を使用します。色の調整を繰り返します。

 

▲次は、本文です。
1回目の刷り上がりは、柄の縁に少しムラが出てしまいました。
これは、スタート時なので機械の水の量の調整が足りていないことが原因です。

▲調整をして再度。今度は綺麗に色が出ました。
人物の写真部分も、メモの書きやすさを考えて、
印刷で調整を重ねます。

 

 

次は、表紙の一番初めにかぶせる透明のシートの校正です。

ニスに白いインキを混ぜたもので、ナギさんの写真に写る人々の
ボディペイントを元にしたパターンを印刷します。

▲校正版です。表紙の作品によって、パターンを2種類用意しました。

 

ただの白ではなく、ニス入りの白で刷るので、インキの調節から始めます。

 

ニスにヘラで白インキを混ぜつつ、紙に取って印刷時の見え方を確認。

 

刷らないことには始まらないので、まずは一回。


▲早速刷れました。

 

▲表紙にかぶせて見ます。少し薄いかな?

 

インキを調節し直してもう一度。

▲少し白が濃くなりました。

 

何回か刷り直しをした後、濃いものと少し薄めのもの2種を
ヨシダナギさんにお送りしました。

校正が終わり、本文を含め全体の方向性が決まりました。
これからヨシダさんに見ていただき、ご意見を待ちます。

 

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今回からの連載でお伝えするグッズ制作は、デザインから全て
サンエムカラーの中で担当しています。
これから他のグッズもご紹介していく中で、どんな加工ができるのか、
どんなものにどんな印刷ができるかを知り尽くした印刷会社ならではの
グッズ提案も知っていただければと思います。

 

また、弊社でも今まで作ったことのない、この展覧会ならではの
ちょっと意外なグッズも登場予定です。

 

どうぞ、お楽しみにお読みください!