印刷職人のしごとばTOPICS

カテゴリ:カサネグラフィカ

岡田 嘉夫「新・源氏物語」 原画展 開催のお知らせ

2024.4.19  カサネグラフィカ, 作品制作, 業務実績, 文化財, 保存・修復のお仕事, お知らせ  , ,

岡田 嘉夫「新・源氏物語」 原画展 開催

田辺聖子(1928-2019) が週刊朝日に足掛け5年169回 連載した「新・源氏物語」に岡田嘉夫 (1934-2021)が 約340枚の挿絵を担当。 今回は50年振りにその一部を 展示公開。
また、当時や晩年に制作した版画作品も展示 販売。岡田画伯の繊細な画筆をご鑑賞ください。

サンエムカラーの関連会社である燦京堂が開催の協力を行なっています。

展示情報
会期:2024年5月2日 (木) – 8日 (水) <入場無料>
午前10時~午後7時(最終日は午後4時まで)
主催:岡田嘉夫展実行委員会
協力: (株) 燦京堂、 ヤマネアートプランニング、ギャラリー白

会場:京阪百貨店守口店 6階 京阪美術画廊
京阪電車「守口市」 駅、 Osaka Metro 谷町線 「守口駅」下車
〒570-8558 守口市河原町8-3
電話:06 (6994) 1313
ホームページ: https://www.keihan-dept.co.jp/

展示作品

【第二十一帖 少女】 初恋は空につれなき雲井の少女の巻

【第二十二帖 玉鬘】 恋のわすれがたみ日陰の玉の巻

【第二十四帖 胡蝶】 春の夜の夢に胡蝶は舞うの巻

 

【第33帖 藤裏葉】

 

作家プロフィール

岡田 嘉夫(おかだ よしお)。1934年〜2021年1月31日。日本の画家、グラフィックデザイナー。源氏物語などの古典作品を題材とした小説の挿画や、田辺聖子をはじめとする作家との共著により、現代的な絵草紙を数多く手がける。鮮やかな色彩、大胆な構図、官能的な描線を駆使することで独自の世界を構築し、現代の浮世絵師とも称されている。

来歴
1934年(昭和9年)、神戸市中央区に生まれる[3]。
1953年(昭和28年)、兵庫県立長田高等学校を卒業後、神戸ドレスメーカー学院(後の神戸ファッション造形大学)などで服飾やデザインについて学ぶ一方、デッサンや絵画技術向上のため自己研鑽に努める。
1971年(昭和46年)から、挿画を中心に本格的な画家活動を開始する。
1973年(昭和47年)、講談社出版文化賞受賞。

著書・共著
『田辺聖子の小倉百人一首(続)』文:田辺聖子、絵:岡田嘉夫(1987)角川書店
『みだれ絵双紙・金瓶梅』文:皆川博子、絵:岡田嘉夫(1995)講談社
『仮名手本忠臣蔵 (橋本治・岡田嘉夫の歌舞伎絵巻 (1))』文:橋本治、絵:岡田嘉夫(2003)ポプラ社
表紙・挿画(書籍)
『新源氏物語(上)(中)(下)』<文庫>文:田辺聖子(1984)集英社
『双調平家物語(2)栄花の巻Ⅰ(承前)』文:橋本治(1999)中央公論社
『いよよ華やぐ(上)(下)』文:瀬戸内寂聴(1999)新潮社
『天切り松 闇がたり(1)闇の花道』文:浅田次郎(1999)集英社

浮世絵約30数点を“手で触れられる”浮世絵複製画展
「市川團十郎と歌川派の絵師たち」、開催のお知らせ

2023.11.17  カサネグラフィカ, 展覧会・イベント情報, お知らせ 

浮世絵複製画展
「市川團十郎と歌川派の絵師たち」展

株式会社サンエムカラーなどによる「市川團十郎と歌川派の絵師たち」展実行委員会は、浮世絵複製画展「市川團十郎と歌川派の絵師たち」展を、2023年12月3日(日)から12月25日(月)まで、大垣書店京都本店イベントスペースで開催いたします。


・江戸歌舞伎の浮世絵、複製画約30数点と原画1点を展示
本展では、江戸歌舞伎をけん引した七代目、八代目、九代目の團十郎の姿が描かれた浮世絵の複製画約30数点を展示します。当時、團十郎三代の活躍を世の中に伝えたのは、歌川派を中心とした浮世絵になります。これらの複製画は日本有数の個人浮世絵コレクションである、浅井コレクションから作成。「歌舞伎十八番の内・総角の助六(あげまきのすけろく)」(1896年・九代目市川團十郎)は原画と複製画を展示。原画と見比べて複製画が肉眼では寸分違わないことを確認できます。

・100年続く浅井コレクションから厳選
今回の展示品は、“浮世絵とは、江戸時代の世相の最大の証言者である” という信念に基づいて、初代浅井勇助氏が浮世絵の蒐集を始めて現在に至る「浅井コレクション」の中から選び抜かれました。その数は3万余点にもおよび、それをもとに刊行された浅井勇助著『近世錦絵世相史』(全8巻 平凡社刊)、『錦絵日本の歴史』(全4巻 日本放送 出版協会刊)などは、錦絵による世相史研究の嚆矢(こうし)となっています。

・複製画なので、作品に触れることが可能
本展の浮世絵の複製画は、来場された方の手で触ることができます。視覚と触覚で浮世絵の質感が堪能できる、国内では珍しい展示となります。また視覚障害のある方にも浮世絵の魅力に触れていただけたらと思います。

・江戸に想いを馳せる関連グッズを販売
本展では、図録、グッズ、浮世絵複製画、関連本も販売いたします。手ちぎり越前和紙ポストカード、和紙風チケットファイル、風呂敷、てぬぐい、和綴じノート、今治タオルハンカチ などが並び、「和」を意識したグッズ展開となっています。

・十三代目襲名式と同時期に開催
ちなみに「當る辰歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」が京都・南座で、2023年12月1日(金)から開幕。南座から徒歩17分の大垣書店京都本店での開催になり、この襲名披露興業を寿(ことほ)ぐ企画でもあります。

 

開催概要

浮世絵複製画展「市川團十郎と歌川派の絵師たち」展

江戸の文化文政から明治まで、江戸東京の歌舞伎を牽引してきた市川團十郎三代の軌跡を、爛熟期の浮世絵でたどる展覧会を開催します。文化文政期、七代目が歌舞伎を江戸が誇る町民文化にまで高め、天保の改革による弾圧のなか、江戸一番の美男子だった八代目がその人気を支えました。そして明治時代、九代目が近代歌舞伎を切り拓きます。こうした團十郎三代の活躍を世の中に伝えたのは、当時最盛期を迎えていた歌川派を中心とした浮世絵師たちでした。

浮世絵複製画展「市川團十郎と歌川派の絵師たち」展では、江戸歌舞伎をけん引した七代目、八代目、九代目の團十郎の姿が描かれた浮世絵を中心に複製画約30点を展示します。これらの複製画は日本有数の個人浮世絵コレクションである、浅井コレクションから作成。なお、本展の浮世絵の複製画は、来場された方に手で触ってもらうことができます。視覚と触覚で浮世絵の質感が堪能できる、国内では珍しい展示となります。100200年前の浮世絵を見て触れて、あなたも歴史の証人になってみませんか。

出展作家:歌川豊国、歌川国貞、歌川国芳、豊原国周など

開催概要

イベント名称 :浮世絵複製画展「市川團十郎と歌川派の絵師たち」展
開催期間 :2023123日(日)~1225日(月)10:0022:00(最終日のみ17:00まで)
開催場所 :大垣書店京都本店イベントスペース
入場料   :無料
住所    :〒600-8565 京都市下京区四条通室町東入函谷鉾町78 京都経済センター SUINA(すいな)室町1F(京都市営地下鉄烏丸線「四条駅」下車、阪急京都線「烏丸駅」下車、26番出口直結)
主催:「市川團十郎と歌川派の絵師たち」展実行委員会・大垣書店


媒体掲載

本展はいくつかの媒体で紹介いただいています。ぜひご覧ください。

「京都観光Navi」
https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=9158
「デジスタイル・京都」
https://www.digistyle-kyoto.com/event/37920
「KYOTOLIFE」
https://www.life-info.co.jp/ukiyoe_sunm/
「Kyoto Love. Kyoto」
https://kyotolove.kyoto/I0000582
「ススミカマガジン」
https://susmca.com/danjuro-and-utagawa-ukiyoe/
「京都で遊ぼう ART」
https://www.kyotodeasobo.com/art/exhibitions/danjuro-utagawa/index.html

ラジオ局FM京都の番組「ONE FINE DAY」(DJ:寺田有美子)で11月12日13:00頃に紹介されました。

江戸歌舞伎と浮世絵の関係性

江戸時代後期から末期は、江戸文化の爛熟期でもありました。歌舞伎も、その江戸文化を代表するもののひとつとして大変な人気となっていたわけですが、その歌舞伎とのコラボレーションで全盛期を迎えていたのが浮世絵(錦絵)でした。

とりわけ豊国、国貞の歌川派は、歌舞伎役者や名場面を描いて人々から大きな支持を得ていました。 当時、歌舞伎界を代表する名優、七代目市川團十郎は、歌川国貞と懇意にしており、團十郎を描いた浮世絵(錦絵)は、その人気と相まって、大いに売れたと言います。こうして歌舞伎界の大名跡、市川團十郎の波瀾に満ちた活躍は、浮世絵(錦絵)によって現代に伝えられることになりました。

 

七代目、八代目、九代目團十郎の歴史に残る逸話(エピソード)

・七代目 市川團十郎

七代目市川團十郎は、豪快ななかにも男らしい色気がただよう芸風だったらしく、市川宗家のお家芸である荒事をよくするほか、四代目鶴屋南北と組み『東海道四谷怪談』の民谷伊右衛門のような悪役をやって人気を取った。いわゆる「色悪」の領域を確立した人物である。

天保3年(1832年)、息子・六代目市川海老蔵に八代目團十郎を継がせ、自身は五代目市川海老蔵を襲名する。このとき成田屋相伝の荒事18種を選んで「歌舞妓狂言組十八番」と題した摺物にし、これを贔屓客に配った。これが「歌舞伎十八番」となった。七代目團十郎改メ五代目海老蔵は、市川宗家=荒事の本家=江戸歌舞伎の権威、という図式を完成させた。また現代使われている「おはこ」という言葉は「歌舞伎十八番(じゅうはちばん)」の台本を箱入りで保存したことに由来するといわれる。

天保13年(1842年)、天保の改革の旋風が吹き荒れるなかで、海老蔵は突如江戸南町奉行所から手鎖・家主預りの処分を受け、さらに江戸十里四方処払いとなる。これによって江戸の舞台に立つことが不可能となった海老蔵は成田屋七左衛門と改名。一時、成田山新勝寺の延命院に蟄居したのち、駿府へ移る。その後さらに幡谷重蔵と改名して大坂へ昇り、京・大津・桑名などで旅回り芝居の舞台に立った。追放の直接の原因は、奢侈禁止令に触れる派手な私生活と実物の甲冑を舞台で使用したというものだったが、要するに罪状は何でも良く、その目的は江戸歌舞伎の宗家として江戸っ子の誰もが認める「あの團十郎」を手厳しく処罰することにより、改革への腰の入れようを江戸の隅々にまで知らしめることにあった。

・八代目 市川團十郎

「助六」の舞台上で、八代目が身を沈めた桶の水を美顔水としてとっくり1瓶1分(現在の価格で3000円ほど)で販売すると飛ぶように売れた。なかには八代目の痰を「団十郎の御痰守」として販売する者までいた。

・九代目 市川團十郎

1887年(明治20年)、演劇改良運動の一環として、明治天皇の御前で初の天覧歌舞伎を催すという栄誉に浴し、「勧進帳」の弁慶などを務めた。この天覧歌舞伎は外務大臣・井上馨邸で開催されたが、九代目は井上のほかにも演劇改良会を通じて、伊藤博文や松方正義などの元老とも交流を持ち、歌舞伎俳優の社会的地位の向上につとめた。

 

「市川團十郎と歌川派の絵師たち」展実行委員会について

社名   :株式会社サンエムカラー
本社所在地:〒601-8371京都市南区吉祥院嶋樫山町37
代表取締役:松井勝美
設立   :1985810日 設立
事業内容 :8K印刷(超高精細印刷)
      カサネグラフィカ(次世代高精細複製)・ジークレー版画
      カタログ・パンフレット・チラシ等の企画・印刷・加工
      FMスクリーン印刷 LED-UV印刷
      高濃度印刷
      特殊印刷レプリカ印刷・ルミナアート印刷
      グッズ企画・制作・販売
ウェブ  :https://www.sunm.co.jp/

社名   :橘企画株式会社
設立   :201011
代表   :橘 倍男
所在地  :〒101-0047東京都千代田区内神田1-10-8 ハゴロモビル2階
事業内容 :カレンダーの企画・製作・販売
      キャラクター商品の企画、開発、販売
ウェブ  :https://www.sunexcelartcalendar.com

 

本展への問い合わせ

担当者:「市川團十郎と歌川派の絵師たち」展実行委員会 吉田
メールアドレス:yoshida@sunm.co.jp
電話番号:サンエムカラー内実行委員会 075-671-8458


写真家・横山隆平、彫刻家・長谷川寛示、作品制作のために来社

2023.5.22  カサネグラフィカ, 作品制作, 業務実績, 立会いにいらっしゃいました!, 展覧会・イベント情報  , , , , , ,


アーティスト2名による印刷立ち合いのレポート

サンエムカラーでは、美術館やギャラリーで展示をするアーティストが来社して、作品制作を行うことがあります。今回はアーティストとコミュニケーションを取りながら、紙以外のさまざまなメディアにプリントを行い、作品が完成していく過程をお届けします。サンエムカラーのスタッフは美術関連の印刷を日々行っているので、そこで培ったスキルを発揮する腕の見せ所です。

 

先日、写真家の横山隆平さん彫刻家の長谷川寛示さんが、それぞれの個展に向けた作品制作のため、共にサンエムカラーの京都本社に来社しました。

横山さん、長谷川さんは京都市京セラ美術館で現在開催中の「特別展 跳躍するつくり手たち」で、それぞれの作品を展示するだけでなく、共作も展示しています。また、お二人ともサンエムカラーの印刷技法「カサネグラフィカ」を使って作品を制作することから、今回揃っての制作立ち会いが行われました。今回使われる技法のカサネグラフィカは、メディアにインクを何層も「重ね」て塗ることで、独特の質感を作品にもたらします。

一日がかりの作品制作は、横山さんからスタートしました。

 


横山隆平「WALL cutout / BLIK #01#02」制作風景

横山さんは、サンエムカラーが大判のUVプリンタ「スイスQプリント」を使ったカサネグラフィカの技法を始める前から、これまでに多くの作品のプリントを行ってきました。

今回の横山さんの新作「BLIK」は、鉄板に木枠を取り付けたメディアに、顔料箔やスプレーを施し、その上にカサネグラフィカでプリントを行いました。

今までにいくつもの作品をカサネグラフィカで制作してきた横山さんは、プリントの特性を熟知しており、データづくりから出力方法まで十分に心得ています。プリントするデータの処理も、これまでの経験から横山さん専用にチューニングされたICCプロファイルで変換して、数回のテストプリントを経て本番を行いました。

横山隆平「WALL cutout / BLIK #01#02」完成。

 


横山隆平「WIND [No. 05 May 6, 2023]」制作風景

もうひとつの作品「WIND」は、アルミボードにハーネミューレ紙を貼ったメディアに、顔料箔とスプレーを施してから、プリントを行いました。

このプリント方法は過去にも行っていて、今回は過去の作品と同じ風合いになるように調整してからプリントをしました。

プリントは焼き込みのような方法をとっていて、数回の塗り重ねで意図した仕上がりになるように調整しています。

今回のメディアとなるアルミと顔料箔、スプレーの上へのプリントは、インクの乗り方が異なります。仕上がりを確認しながら、横山さんの望んでいる調子の部分を塗り重ねていきます。

写真制作の基礎である暗室でのプリント現像の焼き込み、シルクスクリーンの追い刷り、そういった手仕事のようなことをデジタルを介して行なう作業は、毎回面白いなと感じています。

横山隆平「WIND [No. 05 May 6, 2023]」完成。

 


長谷川寛示「bottle to bottle」制作風景

以前、長谷川さんは木彫りの植物の葉の上に、テキストをプリントする彫刻作品を制作しました。今回は彫刻作品ではなく、本銀箔とカラーを施した木枠にモノクロのプリントを行います。

仕上がりのイメージの確認のため、まずフィルムにプリントをして、それを木枠に重ねて確認を行いました。モノクロ作品を二階調にした作品は、画像処理やRIPの工程で余計な色分解をしないよう、また風合いが変わらないように処理を施しました。

何度かのトライアンドエラーのなかで生まれたアイデアにより、わざと二階調の生成を荒らす処理を試み、味わいや色気の良さからその方法で最終的に決定をしました。

作家とのディスカッションによって、長谷川さんの作品がブラッシュアップされる瞬間は、この場でなければ起こりえないので、作品の生み出される面白みを感じました。

 

プリントしてみないとわからない

プリントの方針が決まり、テストピースのプリントを行いました。

フィルムの上にに乗せるのと、実際にプリントするのでは、風合いが変わることが予想されるので、まずは本番前に小さいテストピースを制作します。テストピースへのプリントは、フィルムよりも軽い仕上がりになるので、その変化量を逆算してから本番を行いました。

 

引き算の設計

一般のインクジェットプリンタは、モノクロデータでプリントするとカラーインクを含んだ分色を強制的に行います。カサネグラフィカでは、モノクロ作品の場合、黒インクのみや墨基調の分版のような印刷の製版に近い処理を行います。どちらにも長所と短所があります。

当初は黒インクの上にニスを乗せる予定でしたが、銀箔と黒インクの馴染みが良く、ニスを加えると質感に差を与えすぎるという判断から、黒インクを乗せるだけの設計になりました。

この引き算の判断は、工程や手数を増やして付加価値を付けるという発想でなく、良い作品をつくるための思い切った判断で個人的にグッときました。

長谷川寛示「bottle to bottle」完成。

完成した作品は梱包を施した後に、個展が行われる東京のギャラリーへと旅立って行きました。京都、東京の会場で、横山さん、長谷川さんの実際の作品をご高覧ください。

 

サンエムカラーでは、アーティストが構想する作品を具体化するために、印刷技術や作品の方向性を意見交換をしながら、作品制作の協力を行っています。連絡いただけましたら、より良い作品を世に出すためのお手伝いをさせてください。

 


展覧会情報

横山隆平「CITY from the WIND / Carpe diem」
KANA KAWANISHI GALLERY(東京)
2023年6月3日〜7月1日
https://www.kanakawanishi.com/gallery

長谷川寛示「decey,remains」
KANA KAWANISHI GALLERY(東京)
2023年5月27日〜6月24日
https://www.kanakawanishi.com/exhibition-041-kanji-hasegawa

「特別展 跳躍するつくり手たち」
京都市京セラ美術館(京都)
2023年3月9日〜6月4日
https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20230309-20230604
横山さん、長谷川さんそれぞれの作品と共作が展示中。

高尾俊介 「Generativemasks」カサネグラフィカ制作

2023.3.25  印刷作品アーカイブ, カサネグラフィカ  , , , , ,

高尾俊介さんの手掛けるジェネラティブアート作品「Generativemasks」、
フィジカル版をカサネグラフィカの技法で制作させて頂きました。

10点制作された「Generativemasks」カサネグラフィカ版は、
2023年3月24日(金) – 5月21日(日)の期間、GYRE GALLERYで開催される、
『超複製技術時代の芸術:
NFTはアートの何を変えるのか?——分有、アウラ、超国家的権力——』 展
に展示されています。
https://gyre-omotesando.com/artandgallery/nft-art/


ジェネラティブアートは、プログラムなどを用いて数学的・機械的・無作為自立過程によってつくられた芸術作品です。Generativemasksもまた、プログラムのコードで制作され、10000点のコレクションはリロードする度に違うカラーリングになります。
https://generativemasks.io/

カサネグラフィカ版のGenerativemasksは、高尾さんにご来社頂き、会社見学とフリーディスカッションをするところから始まりました。これまでカサネグラフィカで制作したアート作品の事例やサンプルをご覧頂き、どういった質感や凹凸感を加えたら良いか検討し、想定されるアイデアを実際の作品でテストを重ねました。

テストを重ねる中、作品のテクスチャーや影の落とし方など、コードに手を加えて頂き、カサネグラフィカ版用に調整がされています。
また、レリーフのような凹凸を加えるにあたって、プリンタのチューニングも新たに構築しました。

 
途中の失敗作。浮き剥がれは、硬化の設定を変えることで解決した。

  
凹凸のステップチャート。右の円が高くなめらかに隆起するようリニアリゼーションから見直した。

また、今回一番のトピックは、凹凸の高さデータもコードで生成されている点です。
カサネグラフィカの凹凸データは、濃い所が高く、薄い所が低いアルファチャンネルで作成されています。
その凹凸データは、カラー画像から画像処理で生成するか、現物の高さデータをスキャニングして
プリントを行います。Generativemasksも当初はカラー画像から凹凸画像を制作する予定でした。

カラー画像から凹凸画像を作成する場合、高さの前後は色情報から作られどうしても狙い通りにはなりません。
ここを、高さ情報専用にコーディングし、そこから生成されたアルファチャンネルを使うことで、
画像の生成順に高さが積層される2.5Dプリントを実現する事ができました。

高さ情報をジェネレーティブしプリントする試みは、確認とってませんが、
前例が無いように思います。わりとさらっとデータが来たので、高尾さんの対応に衝撃を受けました。

https://twitter.com/takawo/status/1630945406829092867?s=20


プリントの方針が定まった後、支持体の検討を行いました。
高級水彩紙をはじめ、様々な候補のうち木彫りのマスクのイメージから、木材へのプリントが決定しました。
木材も様々な木目があり、ツキ板のサンプルからテストを行いました。


ツキ板のテスト。畳の上に置いたらネイチャー感が増しました。どちらもボツです。

最終的に厚みのある木材を選定し、本番のプリントが行われました。

インクを大量に積層し、凹凸を出しています。黒い凹凸だけのもカッコいいです。

  
惜しくもインクが落ちてしまったミスプリント。APとして社内に展示させて頂いています。3Dプリントほどではありませんが、浮世絵の版木のような風合いになりました。

高尾さんより、展示風景の写真提供頂きました。

 

高尾俊介さん




雑記
 オフセット印刷を主業務のサンエムカラーが、4年ほど前にSwissQprintを導入し、「カサネグラフィカ」という技法を名付け様々なアーティストの作品や文化財複製を行ってきました。
 当初あったのは、写真家がアートフェアでペインターに物理的質感で見劣りしてしまう、写真からコンテンポラリー・アートへ進出したいというニーズから、写真家の作風や意向にあわせた表現や質感を開発し、あらたな作家性として作品をつくる事が多かったように思います。
 次のフェーズとして、NFTアートやデジタルアートの作家が、デジタル作品をフィジカル作品を作るケースが増えてると最近感じています。UVプリンターでアート作品を作る行為も定着し、おそらく今後増えて来ると思います。
UVプリンタでアート作品を制作していて感じるのは、何にでもプリントできる、凹凸が加えられるトリッキーな特徴から、簡単に「面白プリント」「技術自慢プリント」になってしまう恐ろしさです。
これはトライアンドエラーの中で、いつもそこからどう脱するかを検討する難しさと面白さがあります。
デジタルプリントをアートとして成立させる難しさは、作家様が一番感じているように思います。
サンエムカラーは、ただ入稿したデータをプリントして終わりでなく、作家様の理想や良い予想外を提供できるよう体制を整えています。UVプリンターでアート作品づくりにご興味ある作家さま、ぜひ一度ご相談頂けると幸いです。

大畑政孝