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吉江淳 『地方都市』

2014.6.4  印刷作品アーカイブ 

本日は、6月6日発行の写真集をご紹介いたします。

いつも素敵な写真集を発行されている蒼穹舎様。
新刊は吉江淳さんの 『地方都市』 です。

地方都市1

表紙は写真を前面に配し、マットPP+箔押し。
シンプルかつ大胆なデザインが目を引きます。

地方都市2

ブロック塀、用水路、店の看板―どの写真も初めて見るはずなのに、昔住んでいたような、すぐそこにありそうな風景。

吉江さんは、出身地の群馬県をはじめ全国の地方都市をフィルムカメラで撮影していらっしゃいます。なんの変哲もない、少し寂しい風景が多いのですが、フィルム撮影独特のしっとりとした質感がなんとも郷愁を誘います。

LED-UV印刷でどっしりとインキの乗った本文。傾きかかった陽の光と陰影の対比が美しく再現されています。

撮影地がわかるような要素はほとんど見当たらず、全国どこにでもありそうという意味では無個性な風景かもしれません。しかし、一枚一枚の写真をじっくりと見ていくと、その絶妙の「普通さ」こそが、そこにしかない奇跡の風景であることがわかってきます。

お求めは、蒼穹舎様までどうぞ。

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『地方都市』
著者:吉江淳
装幀:原耕一
発行:蒼穹舎
印刷:サンエムカラー

仕様:糸かがり上製本、244mm×225mm、128頁
表紙:Mr.B ホワイト、マットPP加工、箔押し
見返し・本文:B7トラネクスト
印刷:LED-UV 200線

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サンエムカラーでは、写真集の出版・印刷のご相談を受け付けております。お問い合わせはこちらからどうぞ。

『ダレン・アーモンド|追考』発売!

2014.5.29  印刷作品アーカイブ 

赤々舎様より発売の、話題の新刊のご紹介です!

『ダレン・アーモンド|追考』

ダレン・アーモンドは、近代・自然・宗教などの切り口で時間感覚や死生観について幅広い表現手法で問いかけるイギリスの作家です。
本書は、2013年11月から2014年2月にかけて水戸芸術館現代美術センターで開催された展覧会のカタログです。

アーモンド1

アーモンド2

6冊の冊子がスリーブケースに収められています。展覧会のチャプターに沿って作品主体で構成されたbook01~05と展示風景と解説を収録したbook06で、1冊ずつ装丁が異なります。
デザインは森大志郎さんです。

アーモンド3

本日は、サンエムカラーが印刷・製本を担当しましたbook03とbook06を中心にご紹介させていただきます。

アーモンド4
book03(左)、book06(右)

book03―Sometimes Still

蛇腹折りの造本のbook03は、比叡山で行われる「千日回峰行」を題材にした映像作品《Sometimes Still》を収録。
アーモンド5

アーモンド6

アーモンド7

この製本は「経本折り」と呼ばれ、その名の通りお坊さんが使う経本に使用されます。ページに分断されていないので、ひとつながりの映像をコマ送りで観るように繰っていくことができ、反対側から開くと裏面にも映像が続きます。
時間の連続性やメビウスの輪のような「ねじれ」を感じさせます。

book06―The Exhibition Catalogue

book06には、展覧会の展示風景が収録されています。

アーモンド8

アーモンド9

先ほどの映像作品のインスタレーションは、こちらで見るとまた圧巻です。

アーモンド10

アーモンド11

後半は解説と後付けですが、こちら、文字色が違うことにお気づきでしょうか・・・?
銀インキとスミインキの混合割合を段階的に変えて印刷することで、後ろのページにいくにしたがって文字が黒からシルバーに変わってゆくというデザイン。
一見シンプルなデザインながら、細部までさまざまな意図が込められていることが感じられます。

最後に、弊社営業担当の臼井のコメントです。

難しい製本だったため、デザイナーの森大志郎さんと頻繁にやり取りをしながら進めました。
Book03は経本折りですが、両面スミベタという加工上のリスクの高い仕様だったことで、まずこれを引き受けてくれる加工業者さんを探すことに苦労しました。最終的に非常に美しく仕上がり、満足しています。
表紙にチップボールを使用していますが、book06では本文との接着部がこの重みに耐えきれず、製本設計に苦労しました。製本会社さんに知恵をお借りし、糸かがり製本と精密な貼り位置合わせによって今の形に仕上がりました。
クオリティの高い製品にこだわる森さんの姿勢になんとかお応えしようと頑張りました。多くの方に手に取っていただけると嬉しいです!

アーモンド12

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ダレン・アーモンド|追考
Darren Almond | Second Thoughts

発 行:赤々舎
デザイン:森大志郎
印 刷:サンエムカラー(book03, 06)
展覧会:水戸芸術館現代美術センター
2013/11/16~2014/2/2

book03―Sometimes Still
仕 様:経本折に表紙貼り付け 162頁
表 紙:3枚合紙(MAG プレーン+チップボール+MAG プレーン)
本 文:シルバーダイヤ
印 刷:LED-UV 230線

book06―The Exhibition Catalogue
仕 様:糸かがり並製本に表紙貼り付け 88頁
表 紙:3枚合紙(MAG プレーン+チップボール+MAG プレーン)
本 文:シルバーダイヤ
印 刷:LED-UV 230線

印刷・装丁についてのご相談はこちら!

宮廻正明 図録 2014 -Tourbillion- / -BEPPIN-

2014.5.29  印刷作品アーカイブ 

宮正明展 図録

宮正明さんの展覧会図録の印刷を、サンエムカラーが手がけさせていただいております。

宮正明 国際巡回展図録 2014
-Tourbillion-

宮正明 高輪会図録 2014
-BEPPIN-

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-Tourbillion- MASAAKI MIYASAKO 2014
イタリア巡回展
Firenze,Palazzo Pitti,Galleria d’arte moderna
5月20日(火)~6月29日(日)

-BEPPIN- 宮正明展 2014
第67回《高輪会》大阪会場 リーガロイヤルホテル
2014年6月6日(金)~6月8日(日)
第87回《高輪会》東京会場 グランドプリンスホテル高輪
2014年6月13日(金)~6月15日(日)

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宮正明氏は、東京藝術大学デザイン科卒業、同大学院保存修復技術日本画科修了。
院展でご活躍とともに、東京藝術大学大学院でのご指導にも携わっておられます。
今回の図録のデザインも、宮氏のアートディレクションを受け、制作・進行いたしました。
細部までこだわりが行き届いており、
ご覧になられる方に楽しんでいただけるよう仕上がっております。

宮正明氏の作品の技法である「裏彩色」。
裏彩色で描かれた作品を、印刷で表現するにあたり、
ヴァンヌーボを用紙として選択されております。

— 裏彩色 —
私が生まれた島根県松江市では、冬は鼠色をした重苦しい雲が辺り一面を覆い、頬と耳だけが
津田蕪(赤蕪)の様に真っ赤に染まります。そのため、この地域を「裏日本」と呼ぶことがあ
ります。
学生時代、古画の模写と修理、表現を学ぶなかで、最も興味を持ったものがありました。平安、
鎌倉期の絹本に描かれた仏画が、「うら」からも彩色されているということでした。私はこの
裏からの彩色を、なんとか自分のものにできないかと考えました。そのとき、1.8匁の薄美濃紙
に出会いました。この和紙は裏からの彩色に最適なものでした。こうして、裏から7割、表から
2割、残りの一割は自然が育ててくれるという技法が生まれました。
<宮正明 日本美術院 同人コラムより>

国際巡回展 図録 イタリア語版
Tourbillion [(仏)螺旋 ]
昨年より国際巡回展が催されております。
(ポルトガル、ハンガリー展開催済)
今回の開催国であるイタリアと、日本の国旗がモチーフになっております。


国旗の色、赤・緑が1色1色微妙に異なっています。
表紙は見返しより小さく、見返しの赤が見えるようになっております。


タイトル部分は、空押し加工


綴じは、和綴じ。
手作業で行われます。
この緑は、氏のご指定で、にごりのない特色印刷。


左綴じ部分を背として(真左にして)開きます。


こちらの掲載作品に画像加工を施して、表1、表4にデザインしました。


表4


ポートレイトも画像加工を施してあります。

つづきまして、こちらのご紹介です。

高輪会 図録
BEPPIN


表紙の古裂地は、氏のコレクションです。
表紙は見返しより右端が5mm短く、見返しの一部がのぞいています。


こちらもタイトル箇所は空押し加工


片袖小口折り


宮氏文章は、アートディレクションに従い、螺旋状にレイアウト


氏の別ショットの写真が掲載されております。

ぜひ会場でご覧になってください!

国際巡回展図録 -Tourbillion-
表 紙:ヴァンヌーボVスノーホワイト
遊び扉:クラシコトレーシングFS
本 文:ヴァンヌーボVナチュラル
装 丁:丁合い後、和綴じ仕上げ
印 刷:FMスクリーン

高輪会図録 -BEPPIN-
表 紙:ヴァンヌーボVスノーホワイト
本紙・本文:ヴァンヌーボVナチュラル
装 丁:並製無線、片袖小口折
印 刷:FMスクリーン

2012年の図録についてはこちら

印刷職人のしごとば-印刷女子
◆サンエムカラーでは、装丁や印刷見積もりの相談も受付中!

第48回造本装幀コンクール 2作品受賞!!

2014.5.9  受賞関連ニュース! 

第48回造本装幀コンクールにおいて

サンエムカラーが印刷を手がけさせて頂いた
2作品が受賞いたしました!!

日本印刷産業連合会会長賞
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書名 杉田一弥活花作品集 香玉
出版 青幻舎
装幀 西岡 勉
印刷 サンエムカラー
製本 新日本製本

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審査員奨励賞
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書名 大竹伸朗”憶速”特別版
出版 エディション・ノルト
装幀 秋山 伸
印刷 サンエムカラー
製本 サンエムカラー

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関係者の皆様、おめでとうございます!!!
サンエムカラー一同よろこびでいっぱいです!

「香玉」は、
前回ブログでご紹介させて頂きましたので
こちらをご参照ください!

今回は「大竹伸朗”憶速”特別版」についてご紹介します!

大竹伸朗”憶速”特別版
2013年夏に高松市美術館で開催された同展のカタログです。

今までやったことがない製本だったため、
形の想像がつかず、完成形が見えない中での試行錯誤でした。

デザイナーのイメージを形にするために、やりとりを繰り返し、
印刷会社であるサンエムカラーと加工屋さんが協力して
なんとか完成させました!

図版冊子 セクション1~7
インスタレーション・ビュー冊子
テキスト・資料冊子
瀬戸内の大竹伸朗さん作品に関するポスター
映像作品DVD


図版冊子はすべて最終ページだけ用紙が違います。

セクション2~5は中綴じのため一緒には綴じることができず、
前のページに糊でくっつけております!

セクション1・6・7は上からホッチキスで綴じたため、少し開きにくくなりました。
なので、本文レイアウトを通常よりも外側に設定して印刷しております。

また、通常中綴じの場合、紙はしを断裁し揃えるのですが、
今回はあえて断裁せずにそのままの状態にしました。


こちらは背固めと言って、背を糊で固定する綴じ方ですが、
仮表紙をつけて製本した後、その表紙を剥がすことで、あえて背をびりびりに仕上げています。

なお、すべての応募作品は7月2~5日に開催される
「東京国際ブックフェア2014」内の特設会場で展示されます。

また、展示後には国立国会図書館の原装保存コレクションとして収蔵される予定です。

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東京国際ブックフェア2014

展示:  日時 7月2日(水)~5日(土)
会場 東京ビッグサイト

表彰式: 日時 7月4日(金)16:30~
会場 東京ビッグサイト 会議棟102

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ぜひご来場くださいませ!

造本装幀コンクールなどの過去の受賞作はこちら。

サンエムカラーでは、装丁や印刷見積もりの相談も受付中!
こちらからどうぞ。

KYOTO GRAPHIE その2

2014.5.7  展覧会・イベント情報 

みなさま、KYOTO GRAPHIEにはもう行かれましたか?

今週いっぱいまで開催されております。
まだ行かれてないという方は、ぜひ足を運ばれてみてはいかがでしょうか!

さて、今回はKYOTO GRAPHIEのなかでも、
日本の写真集にスポットを当てた展示会をご紹介します!

実は、サンエムカラーともとてもゆかりのある内容となっております。

Japanese Photobooks Then and Now

日本の写真集史を作り上げた、1960年代から現代までの写真集を展示しております。
オリジナルの写真の複製物である写真集ですが、
戦後の日本では写真集そのものがひとつの作品として価値を生み出します。

展示作品は現在では出版されていないものばかりです。

これらを一度に見ることが出来る機会はそうそうございません!

会場は祇園、ASPHODEL

1Fでは、1960-70年代の写真家とグラフィックデザイナーによって作られた伝説の写真集の展示
2Fは、その伝統の上に成り立つ現代の写真集を、その場でご覧頂けます。
3Fではワークショップが開催されております!


2Fの写真集の中には、サンエムカラーで印刷させていただいたものが多数ございます。
ぜひ、時間が許す限りお手に取ってご覧下さい!

あいさつおよび解説文も、読み応えありです!

先日、ASPHODELでパフォーマンスを行われた写真家の横田大輔さん。
5月に新作が出版される予定です!
サンエムカラーで印刷をさせていただきました。
追ってご紹介させていただきます!
乞うご期待です!

前回のブログで紹介させて頂いた図録も各会場にございます。
こちらも、ぜひご覧下さいませ!

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Japanese Photobooks Then and Now
会 場 ASPHODEL
住 所 京都市東山区八坂新地末吉町99–10
(四条縄手通りを北へ11軒目東側)
時 間 12:00-20:00
休 館 水曜日
入場料 一般¥500/大学・中高生¥300

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第2回 KYOTOGRAPHIE 国際写真フェスティバル
開 催  4/19~5/11
会 場  京都市内各所
(京都駅・京都文化博物館・京都芸術センター・下鴨神社など)
入場料  各会場:一般 無料~¥500/パスポート¥2000

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サンエムカラーでは、装丁や印刷見積もりの相談も受付中!
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