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ダレン・アーモンド写真集『The Civil Dawns』

2014.7.4  印刷作品アーカイブ 

先日、展覧会図録の記事をお届けした話題の美術家、ダレン・アーモンド。

今回はtorch pressさんから発売の写真集『The Civil Dawns』のご紹介です。

表紙

ダレン・アーモンドは満月の光のみで撮影された”Fullmoon”シリーズでも有名ですが、
今回の”Civil Dawn”は、夜明けの瞬間に差し込んだ光によって撮影されたシリーズ。

「Civil Dawn@Giverny」はクロード・モネのジヴェルニーの庭、「Civil Dawn@Hiei」は比叡山という象徴的なロケーションで撮影されました。

ジヴェルニー

対象物がまとう一瞬の光や空気感を捉える視線は、モネの絵画に通じるものがあります。

比叡山

荘厳な比叡山の夜明け。闇の世界に徐々に光が滲みわたっていきます。

どこにでも毎日訪れる夜明けの瞬間を啓示的な場面に変えてしまうのが、芸術家ダレン・アーモンドの魔術でしょうか。

どの写真も非常に繊細な色合い。

印刷時にはデザイナーの田中さんと編集者の網野さんが立ち会いに来られ、
微妙な色調を決めていきました。

印刷立ち会い

展示室

立ち会い初日終了後、弊社展示室にて。

さて、収録作品はもちろん、デザインにも独特の存在感があります。

上の画像を見ていただいた通り、本文の背景は薄い藤色と茶色のツートンカラー。
表紙は上製本としては薄手で、小口のチリが長めに設計されています。

小口

随所に「おや?」と思わせる仕掛けが施された、掘り出し物の洋書のような味のある一冊に仕上がっています。

是非、手にとってご覧ください。

『Tha Civil Dawns』は、Torch pressさんのサイトからお求めいただけます。

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ダレン・アーモンド『The Civil Dawns』
発行:torch press
デザイン:田中義久
テキスト:堀江敏幸
仕様:A4変型/ハードカバー/84P
定価:4,800円+税
ISBN978-4-907562-01-4

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サンエムカラーで写真集を作りませんか? お問い合わせはこちら。

古の贈り物 | 日本画家 西久松吉雄の世界

2014.6.23  印刷作品アーカイブ 

古の贈り物 | 日本画家 西久松吉雄の世界

6月24日(火)~6月29日(日)まで、
京都、生活あーと空間 ぱるあーとにて、西久松吉雄さんが個展を開催されます。
展覧会に併せて「古の贈り物 | 日本画家 西久松吉雄の世界」が出版されます。

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西久松吉雄展 ─日本画─ 古の贈り物IV

期間:2014年6月24日(火)~6月29日(日)
時間:11:00~18:00(最終日17:00まで)
※終了時刻15分前にはご来場ください
会場:生活あーと空間 ぱるあーと

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西久松吉雄(にしひさまつ・よしお)

略歴:
1952 京都府出身
1976 京都市立芸術大学美術学部日本画科卒業
1985 第11回京都春季創画展春季展賞
1990 第16回京都春季創画展春季展賞
1991 第18回創画展創画会賞
1994 第4回京都新聞日本画賞展大賞
1995 第13回山種美術館賞展優秀賞
2005 第32回創画展創画会賞
2006 第33回創画展創画会賞

現在:
創画会会員 京都日本画家協会会員 成安造形大学芸術学部教授

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ブックデザインを手がけられた浅野豪さんにお話をお伺いすることができました!

浅野豪(あさの・たけし)

1981 岡山県生まれ
2005 成安造形大学 造形学部デザイン科 メディアデザイン群 写真クラス 卒業
2005 東出清彦写真事務所勤務 (2005.7-2009.3)
2008 MIHO MUSEUM 写真集(著者:東出清彦さん)制作参加 2005-2008
2009 グラフィックデザイン、写真を軸に活動をはじめる
2009 成安造形大学 グラフィックデザインクラス ティーチングアシスタント (2009.4-2010.3)
2010 成安造形大学 芸術学部芸術学科 メディアデザイン領域 で勤務 (2010.4- )

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「質感が大事」(浅野氏)
西久松氏の希望により、本の重厚感よりも、手に取りやすさを重視。
手に取って、カバーを取り外してみたくなるような本、を意識されました。

カバーの縦幅を少し短めに。
本棚に入れたときに、背がちらりと見えます。

背は糸綴コデックス装。(糸綴を見せた状態で仕上がり)
これにより見開きいっぱい広げることができます。

魅せる背でもあるため、背丁を抜き、背に色を付けない、糸は白を選ぶなど、
用紙のままを見せるようレイアウトを調節しています。

表紙のタイトルには箔が押されています。
こちらはカバーを外すと見ることができます。

カバーは、取り外したときに、
1つの作品の小下絵と日本画を並べて見られるような仕掛けが。

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「着地点を見つけるのが難しい」(浅野氏)
西久松氏が長きに亘って創られた作品は、相当な数に上りました。
写生や資料なども含めると、その量はさらに膨らみました。

一方で、手もとに残っていない作品も多くありました。
作品を収めたモノクロ写真や、時代が移り行き、
カラープリント、データとして保存されている作品もありました。

そこから、編集方針を決め、作品集のために選び出すことは容易ではありませんでした。

本編の作品ページに入る前に、
制作風景や、旅行先での写真などの導入ページが用意されています。
導入を多く設けることにより、
読者が西久松氏の世界に入りやすいように工夫されました。

ページを開く度に新しい発見があるように、
レイアウトは単調にならないように心がけました。

糸綴コデックス装によって、ノドきわきわのレイアウトも可能に。

下絵やスケッチの図版をノドに寄せることで、
絵片がはさまっているような視覚効果をねらっています。

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日本画の場合、日本画特有の淡い色合いを表現するため、
コントラストをつけすぎないことが重要でした。

「黒」にも微妙な色味が出るよう印刷いたしました。

金箔の色味も、原本に近づけるよう忠実に表現しました。

「西久松先生の色の世界から外れないように」(浅野氏)

西久松氏の、四十年を一区切りとした集大成です。

今後どのような世界が拓けていくのか…。
また、この出版により、お手許を離れた作品と、
どこかでお目にかかれることも、ひそかに期待しております。

展覧会の成功をお祈り致します。

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「古の贈り物 | 日本画家 西久松吉雄の世界」

著者:西久松吉雄
文章:岩城見一、木村至宏、加藤賢治
デザイン:浅野豪
印刷:サンエムカラー
発売:サンライズ出版
発行:2014.6.24
定価:3,500円+税

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用紙
カバー:テイクGA-FS
表紙・裏表紙:わたがみ 雪
本文・見返:ガルバスCoc

製本
並製糸綴コデックス装

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松江泰治さん『JP-01 SPK』印刷立ち会い

2014.6.20  立会いにいらっしゃいました! 

写真家の松江泰治さんが、新作写真集『JP-01 SPK』の印刷立会に来られました。
ある日の朝9時の工場から、立会の様子をレポートします。

工場の準備が整ったところで、満を持して松江さんが登場。
おもむろに眼鏡を外し、本気モードです(後ろから失礼します)。

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色見本のプリント写真と印刷を見比べます。
空撮された土地のディテールが見開き画面いっぱいに迫る作品。
印刷も微妙な色味や質感に至るまで、非常に高いレベルが要求されます。

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今回の撮影地は札幌ということで、こちらは雪景色の写真のようです。
PD谷口と山内副工場長も、緊張の面持ち。

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何度か調整の末、この日最初のOKをいただきました!

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こうして1台1台、2日間にわたり立ち会いが行われたのでした。

そして、こちらにも激しい戦いの痕跡が。

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余白に松江さんやデザイナーさんからの修整指示がびっしりと書き込まれた校正紙。これらをとりまとめ、製版・印刷の現場へ伝わる明確な指示を出すのもPD谷口の仕事です。
下に見えるマルで囲われた部分が谷口の書き込み。明快な指示に長年の経験が凝縮されています。

『JP-01 SPK』は、札幌国際芸術祭2014にあわせて赤々舎さんより7月19日発売予定。
デザイン・装幀にも相当のこだわりが込められているようです。楽しみですね。

仕上がりは改めてご紹介します!

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横田大輔写真集 印刷立会レポート

2014.6.18  立会いにいらっしゃいました! 

横田大輔さんの写真集の印刷立会で、デザイナーの宇平剛史さんが来社されました。

今回の写真集は、インディペンデントの出版レーベル「Newfave」の記念すべき第一作。
サンエムカラーとしてもドキドキしながら臨んだ立ち会いの様子をご紹介します。

さっそく現場へ。
PD谷口、工場長、機長、営業マンが勢ぞろい。印刷物に顔を近づけてチェックしておられるのが宇平さんです。

宇平剛史さん1

「もう少し調子出ませんかね・・・」PDと相談しながら進めてゆきます。

宇平剛史さん2

横田大輔さんは今大注目の写真家で、モノクロ写真を加工・複製して独特のノイズを伴ったイメージを生み出す手法で知られます。

こちらは参考としてお預かりした前回の写真集。前回はざっくりとした質感のコピー本でしたが、今回はトリプルトーン+マットニスで表現します。
こうした出力方法の違いによって生まれる差異も、横田作品の一部になっていきます。

宇平剛史さん3

「印刷の現場で、仕上がりはいかようにも左右され得るため、
とくに写真集の場合は最後まで気が抜けません」 と宇平さん。

独立されて2年目、お若いながら落ち着いた物腰で、堂々とされています。

宇平剛史さん4

ひとまず1台、OKをいただきました。

立ち会いの合間は和気あいあいとした雰囲気。ベテラン営業マン飯田が印刷機について解説しています。

宇平剛史さん5

印刷の方もテンポよく進み、順調に刷りあがっていきます。

宇平剛史さん6

実は宇平さん、私こと広報担当Tと同い年とのこと。同世代が活躍している姿に、とても良い刺激をいただきました!
モノづくりの現場で若い世代が活躍している、良い風景ですよね。

さて、どんな写真集に仕上がるのでしょうか?

続編をお楽しみに!

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Newfaveのサイト http://newfavebooks.com/
横田大輔さんのサイト http://daisukeyokota.net/
宇平剛史さんのサイト http://goshiuhira.com/

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サンエムカラーでは、作品集の出版・印刷のご相談を受け付けております。お問い合わせはこちらからどうぞ。

加藤千洋さん「旅スケッチ」

2014.6.9  印刷作品アーカイブ 

先週、同志社大学教授で報道番組のコメンテーターとしてもご活躍の加藤千洋さんが本社にお越しくださいました。

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BS朝日の番組「にほん風景遺産」で、全国を旅しながらスケッチを描きためてこられた加藤さん。昨年9月から今年3月にかけて、河口湖ミューズ館・与勇輝館でスケッチ展を開催されました。
そしてこの度、倉敷でもスケッチ展を開催されることとなり、当社がお預かりしている作品から出展作を選びに来社されたのでした。

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当社大ホールにて、作品を選定される加藤さん。

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個展は倉敷の「夢空間はしまや」で、8月21日~9月15日(火曜定休)の開催予定。
8月31日には加藤さんの講演会も予定されています。
(※開催予定は暫定で、変更になる場合がございます。)

会場は由緒ある呉服店の米蔵を改装した素敵なギャラリーカフェで、加藤さんも大変お気に召されているとのこと。ぜひお出かけください。

こちらは、「にほん風景遺産」から加藤さんのスケッチをまとめた冊子『旅スケッチ』(BS朝日、2013年11月28日発行)。
サンエムカラーが制作・印刷・製本を担当させていただきました。

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温かみのある用紙を使った和綴じ製本で、手に良くなじみます。

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印刷はFMスクリーンで、味わい深い色鉛筆のタッチやメモ書きもそのまま再現しています。

元新聞記者でいらっしゃる加藤さんの観察眼もさることながら、訪れた土地への愛情を感じ取ることができ、心がほっと和みます。

この夏は、スケッチブックを片手に旅に出てみてはいかがでしょうか?

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