印刷職人のしごとばTOPICS

京都造形芸術大学の学生の皆様が会社見学に来られました

2019.5.24  印刷職人、仕事中!, 会社見学 

5月23日(木)に京都造形芸術大学、美術工芸学科の神谷徹准教授と3・4回生の学生の方々、計11名が会社見学にお越しになられました。

会長の松井から挨拶があり、「印刷とは自然との戦いや」と、印刷が湿度や気温などその時の気候に影響を受けやすいことや、綺麗な印刷をしたいという思いからサンエムカラーの「燦・エクセル・アート印刷の8K」ができたことなどの話をしました。

 

その後、サンエムカラーと刷り師松井勝美を紹介した、DVD「匠の世界」を視聴していただきました。

 

本社5階にある展示室にて、サンエムカラーで印刷した作品のレプリカや写真集、アートブック、展覧会のグッズなどの完成品を見ていただき、印刷物がどのように完成していくかを順番に見学していただきました。

 

CDC事業部にて、画像の修正から面付けまでを説明。

ギガ・ピクセル・アートスキャナーも見学していただきました。普通のカメラやスキャナーでは撮れない凹凸のデータや、それを元に印刷した凹凸のある印刷物に学生さんたちは大変興味を持っておられました。

 

 

本社ビルから印刷工場へ移動。工場にて、完成した面付けデータをアルミの版に焼く刷版の工程を見学。その後、印刷機の油性とUVの違い、8色機の説明や、印刷の時に色がちょっとしたことで変化することなどの説明をし、会社見学は終了しました。

 

 

授業時間内での見学だったこともあり、もっと説明したいことがたくさんありましたが、駆け足気味な会社見学となってしまいました。

神谷徹准教授、3・4回生の学生の皆様、お疲れ様でした。

 

営業部 白石

津軽再考 印刷立会

2019.5.16  1冊の写真集が完成するまで 

先日、写真家の柴田祥さんが写真集「津軽再考」の印刷立会に来社されました。

当日の印刷はスムーズに進み、現在は製本の工程へと進んでいます。


印刷物確認中の柴田さん

 

今回、ネットでの先行販売分(完売済み)とプラスアルファで全600冊作成予定の内200冊に作家のサインを入れたいとの希望がありました。

普段は製本され完成した本にサインを入れるのが一般的ですが、時間の関係で印刷立会と並行して柴田さんにサインを書いてもらいました。

200冊にサインを入れるのですが、今回の製本は少し複雑な工程をたどるので予備が150枚必要と製本会社からの回答が。

計350枚の印刷物にサインを柴田さんに書いてもらいました。ご苦労様です。


刷りあがりの印刷物にサインを入れる柴田さん

週末あたりには本が完成しますので、本の内容はまた改めて記事にします。

 

と、いつもは印刷立会だけの記事を書いていますが今回はここからが本番です。

印刷立会からさかのぼること数ヶ月前、道音舎の北浦さんから新しい写真集を作りたいので相談をしたいと久しぶりに連絡が有りました。

道音舎さんの出版第一号写真集「狼煙」の製作工程はかなりくわしくブログの連載記事・1冊の写真集が完成するまでに書いていますので興味のある方はそちらをご覧ください。

 

後日、道音舎の北浦さん、硲さんに来社していただき写真集の仮レイアウトと柴田さんの作品がどのようなものかを見せてもらいました。

初見の感想はモノクロ写真の調子がかなり微妙な変化のある写真ばかりでこの調子を印刷で再現することが難しいだろう。

しかし柴田さんの写真の魅力はこの微妙な調子にあるのだろうなと思い道音舎のお二人にその感想を伝えました。

前回はダブルトーンでの印刷でしたが今回の作品はダブルトーンでは調子を完璧に表現できない可能性があると伝えました。

カラーの写真については問題無く印刷できると思いその旨も伝えました。

 

どのような印刷にすれば良いのかテストをやってみないと分からないので道音舎さん、作家さんにテスト用のデータとターゲットのプリントを8点選んでくださいとお願いしました。

なぜ8点なのかと言うと、今回の本のサイズ横28.2cm 縦22.4cmの場合、用紙が菊全(63.6cm ×93.9cm)の紙に片面8ページ分を印刷することが一番効率がいいからです。

さらに、使用したい用紙も決めてくださいと伝えました。

送られてきたプリントを見ます。

やはりこの微妙な調子の変化を印刷するのは難しいなと思いながら製版部署へダブルトーンとトリプルトーンのテスト刷り用の版作成の指示をだします。

 

ちなみにテスト刷りの用紙は

1・モンテルキア 菊判<77.5>T目

2・スマッシュ 菊判<76.5>T目

の2種類で行いたいとの要望です。

テスト刷りの用紙は種類をもっと増やす事も可能ですが増やした分だけコストがかかります。限られた予算内での写真集作成では完成のイメージを明確にし、種類は少なくしたほうが良いでしょう。

 

テスト刷りの結果、まずは用紙2種の違いから。

画像を見てもらえば分かると思いますが、インクの付きが良いのはスマッシュのほう。かなりクリアに印刷されています。

一方モンテルキアのほうはスマッシュよりもインクの付きが悪いためくらべるとかすれた感じがします。


左がスマッシュ、右がモンテルキア。どちらも印刷はダブルトーン。

スマッシュはシャドー側の黒もモンテルキアより濃く印刷されているのでレンジが広く表現の幅はこちらが良好。

モンテルキアはマット感があり、かつ少しぼやけた風合いの印刷になっているので柴田さんの作品を表現するにはこちらを選んでもいいような気がします。

 

次にダブルトーンとトリプルトーンの違いを。分かりやすいようにシャープに印刷されているスマッシュでの対比画像を見てみましょう。


左がダブルトーン、右がトリプルトーン。

一目了然でトリプルトーンのほうが調子の表現が良いのが分かります。特に中間の調子の差は歴然です。しんしんと降っている雪のピントのズレによる奥行きがトリプルトーンではかなり良い調子で印刷されています。

ただし、グレーを2色で印刷しているトリプルトーンの場合、薄グレーでの調子版が一番インキ量を多くしているため、濃いグレー1色で調子をだしているダブルトーンよりも力強さが弱くなっています。

 

このテスト結果を道音舎のお二人に見ていただき、ぼくなりの見解を伝えます。

まず、懸念であった調子の表現ですがダブルトーンでも問題無く表現できていること。トリプルトーンを使用しなくても大丈夫だと思いますと伝え、ただしトリプルトーンのほうがさらに調子をだす事ができると伝えます。

テスト印刷を見ればその違いは分かりますので道音舎のお二人もトリプルトーンの表現力に感心されていました。

 

しかし、トリプルトーンには最大の欠点があります。

ダブルトーンにくらべて1色余分に印刷するためにコストが大幅に上がってしまいます。

先ほども一度コストについて話しましたが本を作る時、無尽蔵にお金が使えるわけではありません。

限られた予算内でどれだけ自分たちが思い描いている本に近づけるか、このことがもっとも重要であると言っても過言ではありません。

道音舎のお二人は作家さんと相談して決めますとのことでした。

 

用紙については個人的にはスマッシュのほうがレンジが広い分、やりやすいとは思いますがこの写真集は出版社と作家の本です。

どれを選択するのかは出版社と作家が決めること、アドバイスはしますがこちらが良いですからこちらでいきましょうとは言わないようにしています。

 

後日、作家さんとの話し合いの結果、用紙はスマッシュ、ダブルトーンでいきたいとの連絡をもらいました。

ダブルトーンでも調子のつぶれは少なかったのと作家である柴田さんがトリプルトーンだと繊細過ぎるとのことだったのでコストのこともあり、良い選択だと思いました。

 

次にぼくが行う仕事はテストよりも良い印刷に仕上げること。

テスト印刷とターゲットプリントを見くらべてライト部分が重く感じるのとグレーの色が違うことが大きく外れているところです。

グレーの色はテスト印刷時、分かりやすくするためにターゲットよりもニュートラルグレーに近いグレーで印刷していました。

ターゲットはかなり青味のあるグレーですからグレーを青くするだけで近づきます。

しかし先方に確認したところテストのグレーのままでよいとのことだったのでここは変更無しで。

ライトが重く感じるのはコツ版であるスミ版にもライトに点が入っているため。この部分に網点は必要ないと思いスミ版のライト部分5%のところをカットしました。

そして最終印刷したものがこちら、テスト印刷からかなりターゲットの雰囲気に近づいています。


左がテスト。中が最終印刷、右がターゲットプリント

 

以上が今回の印刷設計がどのように行われたのかの概要です。

 

実はテストの時に思いつきでトリプルトーンの色をスミ+グレー2色ではなく、スミ+グレー+白で印刷してみてはどうかと思いやってみました。

先にグレー版の逆版を作りその版で白を印刷。その上からスミ+グレーのダブルトーンで印刷します。想像ではうまくいくはずでしたが結果は・・・

ただ単にダブルトーンで印刷したものがくすんでしまいました。
完全な失敗でしたがまた一つ印刷についての知識が増えたのでその意味では良かったのでしょうか。

 

今回のことは道音舎さんのブログでも硲さんが記事にされていますので読んでみてください。

 

Art Book Director  前川

 

 

写真展「永観堂の世界」が開催されています

2019.5.9  お知らせ, 展覧会・イベント情報 

京都市左京区にある永観堂境内「瑞紫殿」にて、これまで京都の寺社仏閣を数多く撮り続けてきた
水野克比古写真事務所による写真展が開催されています。

 

 

これは、パナソニック株式会社のミラーレスデジタル一眼カメラ、LUMIX Gシリーズ発売10周年を記念し
企画されたもので、様々な表情を見せる永観堂の四季を、当社と長年ご縁がある水野克比古写真事務所が、
1年半にわたりLUMIXで撮り下ろした写真展です。

 

 

当社では、18,700万画素で撮影された永観堂の写真の魅力を余すことなく再現するため、
図録は1,000線相当の超高精細オフセット印刷方式「燦・エクセル・アート(印刷の8K)®」で
印刷しました。
また、会場内には高濃度インクジェット出力方式「エクセル・ピコ・アート®」で印刷した
2m×3.4mの大判プリントの出力で協力させていただきました。

 

新緑が美しい永観堂禅林寺境内「瑞紫殿」にて四季折々の永観堂の世界をご堪能ください。
また、会期中は水野克比古氏・秀比古氏によるトークイベントも開催されますので、
こちらもぜひ足をお運びください。

 

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会期:5月1日(水)〜6月2日(日) 9:00〜17:00(拝観受付は16時まで)
会場:永観堂境内 瑞紫殿
入場無料(境内へは拝観料が別途必要です)

〈トークイベント〉
日時:5月19日(日)、6月2日(日) 14:00〜(約30分)

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休業日のお知らせ

2019.4.26  お知らせ 

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

誠に勝手ながら、2019年4月28日(日)〜5月6(月)まで休業とさせて頂きます。
なお、期間中にいただいたご連絡・注文等は、5月7日(火)よりご対応させていただきます。
皆様にはご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただけますようお願い致します。

今後とも変わらぬご愛顧のほど、宜しくお願い申し上げます。

いかわあきこの『みんなえがお そしてしあわせ展』

2019.4.25  お知らせ, 展覧会・イベント情報 

以前より、グッズ制作や展示会でお世話になっております、ダウン症の画家いかわあきこさんが、
この度、5月1日より京都の美山かやぶき美術館にて個展を開催されます!

 

あきこさんは、鮮やかで緻密、そして感性豊かで優しく、見る者を魅了する素敵な作品を
たくさん描かれています。
当社では、その素晴らしい鮮やかさ・繊細さを表現するために1000線(印刷の8K)で印刷した、
オリジナルグッズの制作もお手伝いさせて頂いております。

(当社HPのオンラインショップにも一部取り扱いがございます)

 

今回、展示会が行われる美山かやぶき美術館は、その名の通り、かやぶき民家を再活用された美術館で、
館内展示作品の鑑賞と共に建造物も楽しめる、他にはない美術館となっております。
温かみのあるあきこさんの作品たちとかやぶき美術館、相性ピッタリの心温まる展示会になりそうです。

5月4日(土・祝)にはあきこさんがご来館、作品制作されます。
生であきこさんの制作風景が見られるチャンスですね!
さらに、同日13:30からは、あきこさんのお母様、居川隆子さんによる講演会
『ダウン症の子を育てて』が行われます。
その他、5月11日にはあきこさんの絵画の世界の中でのピアノコンサートも予定されており、
イベント盛りだくさんとなっております!

 

ゴールデンウィークから始まり、6月中頃まで開催しております。
ぜひぜひ、美山かやぶき美術館へお越し頂き、あきこさんの素晴らしい絵画の数々、ご覧くださいませ!

 

 

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いかわあきこ
『孔雀・花・花火 みんなえがお そしてしあわせ展』

会場:美山かやぶき美術館
会期:5月1日(水・祝)〜6月16日(日)
時間:10:00〜16:30
入館料:大人(中学生以上)500円・小学生200円
(美術館・郷土資料館共通)
休館日:月曜日(祝祭日の場合は翌日)

企画:株式会社ikawaアートプランニング
協賛:株式会社サンエムカラー

 

〜同時開催〜

▼5月5日(日)
①11:00〜 ②14:00〜
ベネチアンアクセサリー作り
体験料:1,500円(材料費・入館料込)

▼5月5日(日)
10:00〜15:00
ミニ動物園
協力金:50円

▼5月4日・5日
10:00〜15:00
美山の食材を使った美味しい屋台
地元の障がい者施設の手づくり商品&米粉パンの販売

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