印刷職人のしごとばTOPICS

カテゴリ:連載・コラム

グッズができるまで②

2018.1.15  グッズができるまで 

サンエムカラーでは、展覧会オリジナルグッズを
はじめとしたグッズ制作を展開しています。

そんなグッズの中でも、弊社で企画・デザインから製作までを
担当している製品の製造過程を通じて、「こんなものも印刷で作れるんだ」
ということや、どんなものにどんな印刷ができるか・どんな加工ができるかを
知り尽くした印刷会社ならではのグッズ提案の幅をお伝えする連載「グッズができるまで」。

2回目の今回は、前回校正の様子をお伝えした
写真家・ヨシダナギさんの個展グッズの本刷り現場を
お送りします。

 


 

第一回目では、メモ帳の紙部分と表紙にかぶせる
ペット素材への校正を行いました。

今日本刷りが行われるのは、31日分のページで
毎月毎年使えるリング式の日めくりカレンダーです。
台紙、本文の裏と表の3種類を印刷します。
数日前に、色校正を行いましたので今回は本刷になります。

本刷りの流れは書籍と同じで、見本を確認しながら
刷り、色が良くなければインキの調節をしてまた刷り…というのを
理想の色が決まるまで繰り返します。
前日の色校正に様々な指示を書き込んでいるので
それが忠実に合って入るかを確認します。


▲カレンダーの校正です。
本文には31種類の写真と、ヨシダさんの旅や生き方にまつわる
名言が収められています。くすっと笑えて元気がでる言葉たちです!

修正指示が書き込まれたこの校正が、今日の見本になります。
書かれた指示は画像のデータ自体に加える修正の指示ですが、
本刷りをしてみてこの修正が正しく反映されているかを
確認するのに使います。

ここに至るまで、各画像の色の補正や全体の雰囲気の統一など
データだけで何回か修正を行いました。

 

早速、台紙の本刷り一回目が上がったようです。
色味の確認をします。
台紙は本文の修正済み画像を縮小してレイアウトしているので
方向性があっているか本文の色校正とも見比べます。

 


▲印刷現場では、網点などを見るために頻繁にルーペを
使います。写真はトンボ(複数の版を印刷する際にずれないように
するための目印)を確認している所です。刷りはじめの作業です。
トンボがずれている=版同士の印刷がずれていると、網点の重なりの
関係で色味も変わるため、確認は大切な作業です。

少し調整が必要なようなので、刷りなおします。
今回はこの作業を3回繰り返しました。
5号機担当の山内さんがばっちり合わせてくれました。

1冊の写真集が完成するまで」ではお客様の立会いのもと
行われる本刷りの様子をお伝えしました。
しかし、全てのお客様に直接現場をご覧いただくわけにはいかないので、
多くの場合は今回のように立会いなしの印刷になります。

ここにいないお客様の完成イメージを営業、画像修正から印刷工場まで
間違いなく伝えるコミュニケーションが、納得の印刷を作ります。

とはいえ、その日の天気など、微妙な変化で印刷は変わってくるので、
いい色に仕上がるまで何回も刷り直しをすることも多々あります。

今回のカレンダーも、複数回の刷り直しを経て、本番の印刷となりました。

 


▲これは本文の刷り取りです。写真右上の機械は、
色を見るための機械です。
最後に色を見極めるのは人の目ですが、数値化して判断することも大切です。

 

ここではまだ詳しくお伝えしませんが、色の精彩さだけでなく、
毎日のメッセージも含めて、魅力的なカレンダーに仕上がりそうな予感です。

 

本刷りが終わり、このあとカレンダーの紙は断裁、加工と工程を進んでいきます。

 

 


 

なんだかんだで展覧会まで半月ほど、先に刷り上ったグッズは、
もう加工も終わって完成見本が届いているものもあります。

次回もまた、何か新しいグッズをご紹介できるかもしれません。

 

次回の更新をお楽しみに!

 

 

 

グッズができるまで ①

2018.1.5  グッズができるまで 

サンエムカラーでは、展覧会オリジナルグッズをはじめとした
グッズ制作を展開しています。

印刷で出来るグッズといえば、どんなものが思い浮かぶでしょうか。
ポストカード、ノート、メモ帳…などなど、弊社オンラインショップで
取り扱っているアイテムは、もちろん全て印刷で作られています。

中にはクリアファイル、マグカップなど、「印刷物」というイメージが
薄いものもあるのではないでしょうか。
そういった、紙に印刷できるグッズ以外にも
多く企画・制作を行っています。

今回は、「1冊の写真集ができるまで」に続きまして、
「グッズができるまで」と題して、グッズ制作の様子を
お伝えしていきたいと思います。

 

———————————————————————————————————-

 

現在制作が進行しているのは、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)が
大人気発売中の写真家、ヨシダナギさんのグッズです。

『SURI COLLECTION』の印刷を担当させていただいたり、
秋に開催をお伝えしました「サプール写真展」での
トークイベントにも参加されるなど、様々な場面で一緒に
お仕事をさせていただいています。

そのご縁で、今回は2018年2月に開催予定の写真展『Tribe Walk』で
販売予定のグッズを企画・制作しております(展覧会については追って詳細を告知させていただきます!)。
企画・デザインは、弊社企画・制作の部署にて担当させていただきました。

2月の開催ですので、順次各グッズのデザインが決まり、校正が印刷されている段階です。

 

早速、校正中の工場よりお届けします。

 

今校正しているのは、2種類のメモ帳です。
柄は、写真右から、表紙、本文1、本文2、本文3の
4種が付け合わせの状態です。
本来は表紙と本文の紙は変えますが、今回は
校正のため、同版・紙替えで校正を進めます。

グッズを印刷するときも、書籍と同じように大きな紙に付け合わせて印刷します。

 

今回の校正では、同じ柄の中で濃度やコントラストに
差をつけたデータを2種用意して、最終的にどのデータを使うかを
実際に印刷されたものや、作家さん、デザイナーの意見を確認して
校了を目指します。


▲『SURI COLLECTION』を色見本にして色を合わせていきます。
表紙はコート系の色を使用します。色の調整を繰り返します。

 

▲次は、本文です。
1回目の刷り上がりは、柄の縁に少しムラが出てしまいました。
これは、スタート時なので機械の水の量の調整が足りていないことが原因です。

▲調整をして再度。今度は綺麗に色が出ました。
人物の写真部分も、メモの書きやすさを考えて、
印刷で調整を重ねます。

 

 

次は、表紙の一番初めにかぶせる透明のシートの校正です。

ニスに白いインキを混ぜたもので、ナギさんの写真に写る人々の
ボディペイントを元にしたパターンを印刷します。

▲校正版です。表紙の作品によって、パターンを2種類用意しました。

 

ただの白ではなく、ニス入りの白で刷るので、インキの調節から始めます。

 

ニスにヘラで白インキを混ぜつつ、紙に取って印刷時の見え方を確認。

 

刷らないことには始まらないので、まずは一回。


▲早速刷れました。

 

▲表紙にかぶせて見ます。少し薄いかな?

 

インキを調節し直してもう一度。

▲少し白が濃くなりました。

 

何回か刷り直しをした後、濃いものと少し薄めのもの2種を
ヨシダナギさんにお送りしました。

校正が終わり、本文を含め全体の方向性が決まりました。
これからヨシダさんに見ていただき、ご意見を待ちます。

 

——————————————————————————————————–

 

今回からの連載でお伝えするグッズ制作は、デザインから全て
サンエムカラーの中で担当しています。
これから他のグッズもご紹介していく中で、どんな加工ができるのか、
どんなものにどんな印刷ができるかを知り尽くした印刷会社ならではの
グッズ提案も知っていただければと思います。

 

また、弊社でも今まで作ったことのない、この展覧会ならではの
ちょっと意外なグッズも登場予定です。

 

どうぞ、お楽しみにお読みください!

 

1冊の写真集が完成するまで 番外編

2017.11.16  1冊の写真集が完成するまで 

サンエムカラーが、作家の方と協力して
新しい写真集を作り上げるまでの様子をリアルタイムで
お届けするシリーズ「1冊の写真集が完成するまで」。

おかげさまで、第7回目の連載にて、無事に照井壮平さんの写真集『狼煙』の完成を
お伝えすることができました。

(過去の記事はコチラからお読みいただけます。)

 

先日、『狼煙』を出版された道音舎の北浦さんが、
写真集の出版を記念して開設されたブログ「道と本」にて、
『狼煙』のディレクションを担当いたしました営業部・前川への
インタビュー記事をあげてくださいました。
『狼煙』のこだわりポイントや、サンエムカラーとして今の時代に
アートブックを作ることに対する思いを語っています。
普段お伝えすることのない、お客様の熱い思いを直接受け止め、
形にするために日々奔走する営業の生の声を引き出していただきました。

『狼煙』の制作は、作家、出版社、印刷会社と様々な視点から
本のできる流れを見る貴重な機会となりました。
その完成後に始められた「道と本」では、書店に本が並んでいく喜びや
展覧会の様子などをまとめられています。

1冊の写真集が完成した後も、それがみなさまの手に渡っていく感触、本によって
ますます広がっていく作家さんの可能性を感じるのは、印刷を手がけた会社として
とても嬉しいことです。

 

道音舎様「道と本」、ぜひのぞいてみてください。

 

1冊の写真集が完成するまで⑦

2017.10.5  1冊の写真集が完成するまで 

サンエムカラーが、作家の方と協力して
新しい写真集を作り上げるまでの様子をリアルタイムで
お届けするシリーズ「1冊の写真集が完成するまで」。

 

第7回目の更新です。ついに写真集の完成をお伝えします。

 


 

第6回でお伝えした製本工程から、約一週間後。

サンエムカラーに、出来上がった写真集が届きました。

 

 

照井壮平さんの写真集「狼煙」、完成です。

 

 

表紙を開いたところから、照井さんの世界、
和歌山の自然が残る熊野・高野山、照井さんにとっての
「怪しく荒ぶる映像記憶」に引き込まれます。

 


背に施された濃いグレーのシルク印刷により、和歌山の夜の
世界が分断されることなく広がっています。

1ページ目を開いた時に切り取られて見える裏表紙と
コデックス装の背がとてもクールです。

 

背と同じく東美企画さんで印刷していただいたタイトルの白インキも、
取材時同様にエッジの効いたものになりました。

 

ダブルトーン(黒インキ+グレーの印刷)による
深いモノトーンで表現された写真からは、ワイルドで
怪しい空気がにじんでいます。

 

写真と同じく、静かながら力強い文章が、
熊野・高野山への想い、その姿を撮影することに
費やされるエネルギーの大きさを、見る人に
余すところなく感じさせるようです。

 

月が沈んで、和歌山の夜が終わります。
夢から覚めたような気分が残ります。

 

作品、デザイン、印刷、製本の全てが合わさって
ひとつのストーリーを完成させたということを
強く感じる仕上がりとなりました。

 

 

 

 

シリーズでお伝えしてきた、「一冊の写真集が完成するまで」。いかがでしたでしょうか。

初めての写真集を作りたい!そんな思いを持った
一人でも多くの方が、その第一歩を踏み出すきっかけになれば、
という気持ちでここまでお届けしてまいりました。

印刷会社だけでは写真集は作れません。
お伝えしてきたような製本会社を初めとした
多くの職人さんたちの力もさることながら、
全てはお客様からの「こんな本が作りたい」
という気持ちから始まります。

このシリーズで、写真集ができる工程を
お伝えするとともに、サンエムカラーには
作家さんの実現したい形・ご提案に対して
様々な形でお答えできるご用意があるということを
知っていただけたなら幸いです。

また、写真集・作品集を作る予定のない方も、
本棚にある1冊の本の後ろには、たくさんの
人の思いが隠れていることを頭の片隅に置いて
いただければ、本を眺めるワクワクがほんの少し
増えるかもしれません。

 

今回、このような形で取材にご協力いただいた
照井さん、硲さん、北浦さんには、心よりお礼を申し上げます。

写真集「狼煙」は、10/6(金)より東京で
開催されますTHE TOKYO ART BOOK FAIR 2017にて
販売される予定です。お近くの方、参加される予定の方は
ぜひ、実物をお手に取ってご覧ください。

また、「狼煙」の発刊に合わせて、道音舎様が
新たにブログ「道と本」を開設されています。
デザイナーの硲さんが、印刷や製本の仕様について
書いてくださっています。
写真集に関わるいろんな人から見た制作工程
をお届けできるのも、今回の企画の魅力ですので、
是非、併せてお読みください。

 

「一冊の写真集が完成するまで」は、これにて終了です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

◯「1冊の写真集が完成するまで」番外編はコチラから◯

 

________________________________

著者:照井壮平
発行:道音舎
デザイン:硲勇(ハザマデザイン事務所)
仕様:224×232・上製本(コデックス装)・112頁
定価:6400円+税

________________________________

1冊の写真集が完成するまで⑥

2017.9.29  1冊の写真集が完成するまで 

サンエムカラーが、作家の方と協力して
新しい写真集を作り上げるまでの様子をリアルタイムで
お届けするシリーズ「1冊の写真集が完成するまで」。

第6回は、前回に続いて、サンエムカラーの
外からお伝えしたいと思います。

 


 

第5回目の更新でお伝えした東美企画さんにて
表紙を印刷していただいている間に、
別の場所では本文の製本が並行して進められています。
(印刷立会い・東美企画さんへの見学の様子を、
北浦さんがブログ「みちとおと取材記」にまとめてくださっています。
ぜひ、併せてお読みください。)

今日は、その製本が行われている製本会社・新日本製本さんにお邪魔しようと思います。

サンエムカラーでは、多くの町工場の
職人さんたちの協力を得て書籍を作っています。
今回の写真集「狼煙」に使われる予定の
コデックス製本という形態は、製本の中では
比較的特殊なものです。
コデックスのような特殊な加工や製本に使われる設備を
持っている会社は限られており、製本で言うと
サンエムカラーでは、特殊な製本は
新日本製本さんにお願いすることが多いです。
特に、コデックス装に関しては、すべて
新日本製本さんに製本していただいています。

さっそく、製本の様子を見せていただきたいと思います。

 

工場の2階に上がると、隅の機械の横に
「狼煙」の丁合が済んだ本文が積まれていました。

今日見せていただくこの機械は、バラバラの本文を糸で
綴ってまとめる機械です。
コデックス製本だけではなく、上製本と呼ばれる製本の本はすべて
本文を糸で綴ります。
綴ったあと、本文の背を表紙で包んでしまうのが上製本、
包まずに外から見える状態で置いておくのがコデックス製本、という違いになります。

 


▲機械上部に、綴るのに使う糸が準備されています。
「狼煙」は照井さんたちとの検討の結果、グレーの糸で綴ることが決まっています。

 


▲糸巻きから糸を引っ張り、引っ掛けます。

 

機械の、糸がある部分から見て反対の端には本文がセットされています。


▲白い箱のような部分が本文の束です。

ここから紙が流れて行き…

糸で綴じられていきます。

少し見えにくいですが、反対側から見ると、

綴じられた本文が出てきました。

 


▲薄く何本も走って見える線が、糸で綴られている部分です。


▲開いて見ると、グレーの糸が見えます。

 

もうこれで本として完成に見えますが、この段階では
周りにまだ断裁すべき余白が残っているので、最後に
完成のサイズまで断ち落としてようやく本の形になります。

 

本日見せていただく工程は、ここまでです。

この後さらに、本文の背を糊で固めたあと
上製本の表紙にくっつける作業が残っています。

左が束見本、右が今日綴った本文です。
本文はこれから糊で固められ、束見本と同じ厚みになります。
糊で固める工程も新日本製本さんのお世話になります。

 


 

製本まで来たらもう安心、と言いたいところですが、
背へのシルク印刷や表紙付けなど、あとひとふんばり必要です。

とはいえ、完成をお伝えできる日ももうすぐそこですので、
どうか最後までお付き合いください。

新日本製本さん、今日はありがとうございました。
この後もよろしくお願いします。

 

照井壮平さんの写真集「狼煙」特設HPはこちらです。
ぜひチェックしてください。

 

「1冊の写真集が完成するまで」、次の更新をお楽しみに。

 

 

◯「1冊の写真集が完成するまで ⑦」はコチラから◯