制作事例
東 信と椎木俊介がライフワークとして取り組む『植物図鑑』シリーズは、2年周期に巻を重ね、今回で第5弾を迎えることとなった。 本書には2019年秋から2021年8月までに制作した114点を収録している。この間は歴史的なパンデミックに見舞われた時期と重なり、二人はこの時期に自分たちが人々に対して何ができるかを問い続け、花を生け続けてきた。 その時に出会ったのが、日本の伝統的な「いけばな」のルーツを記す書だった。そこに記されていたのは、大飢饉で失われた多くの命に花を手向け、飢えた人々に粥や風雨を凌げる小屋を与え、そして花を生けて、人々の心を甦らせた僧侶たちの姿だった。覚醒の力、それが花を生けることの本質である。本書には、受難の時代の最中にありながら、心の覚醒への願いを込められている。
東 信(あずま・まこと) フラワーアーティスト。ニューヨークでの個展を皮切りに、ヨーロッパを中心に実験的な作品を数多く発表するほか、2009年より実験的植物集団「東信、花樹研究所(AMKK)」を立ち上げ、世界各地で作品発表を重ねる。独自の視点から植物の美を追求し続けている。
椎木 俊介(しいのき・しゅんすけ) ボタニカル・フォトグラファー。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と姿かたちを変容させる生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。
発行:青幻舎 発行年:2021 サイズ:A4変型(227x27x299mm)、上製本、288ページ https://www.seigensha.com/books/978-4-86152-877-4/