『ダレン・アーモンド|追考』
ダレン・アーモンドは、近代・自然・宗教などの切り口で時間感覚や死生観について幅広い表現手法で問いかけるイギリスの作家です。
本書は、2013年11月から2014年2月にかけて水戸芸術館現代美術センターで開催された展覧会のカタログです。
6冊の冊子がスリーブケースに収められています。展覧会のチャプターに沿って作品主体で構成されたbook01~05と展示風景と解説を収録したbook06で、1冊ずつ装丁が異なります。
デザインは森大志郎さんです。
本日は、サンエムカラーが印刷・製本を担当しましたbook03とbook06を中心にご紹介させていただきます。
book03―Sometimes Still
蛇腹折りの造本のbook03は、比叡山で行われる「千日回峰行」を題材にした映像作品《Sometimes Still》を収録。
この製本は「経本折り」と呼ばれ、その名の通りお坊さんが使う経本に使用されます。ページに分断されていないので、ひとつながりの映像をコマ送りで観るように繰っていくことができ、反対側から開くと裏面にも映像が続きます。
時間の連続性やメビウスの輪のような「ねじれ」を感じさせます。
book06―The Exhibition Catalogue
book06には、展覧会の展示風景が収録されています。
先ほどの映像作品のインスタレーションは、こちらで見るとまた圧巻です。
後半は解説と後付けですが、こちら、文字色が違うことにお気づきでしょうか・・・?
銀インキとスミインキの混合割合を段階的に変えて印刷することで、後ろのページにいくにしたがって文字が黒からシルバーに変わってゆくというデザイン。
一見シンプルなデザインながら、細部までさまざまな意図が込められていることが感じられます。
最後に、弊社営業担当の臼井のコメントです。
難しい製本だったため、デザイナーの森大志郎さんと頻繁にやり取りをしながら進めました。
Book03は経本折りですが、両面スミベタという加工上のリスクの高い仕様だったことで、まずこれを引き受けてくれる加工業者さんを探すことに苦労しました。最終的に非常に美しく仕上がり、満足しています。
表紙にチップボールを使用していますが、book06では本文との接着部がこの重みに耐えきれず、製本設計に苦労しました。製本会社さんに知恵をお借りし、糸かがり製本と精密な貼り位置合わせによって今の形に仕上がりました。
クオリティの高い製品にこだわる森さんの姿勢になんとかお応えしようと頑張りました。多くの方に手に取っていただけると嬉しいです!
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ダレン・アーモンド|追考
Darren Almond | Second Thoughts
発 行:赤々舎
デザイン:森大志郎
印 刷:サンエムカラー(book03, 06)
展覧会:水戸芸術館現代美術センター
2013/11/16~2014/2/2
book03―Sometimes Still
仕 様:経本折に表紙貼り付け 162頁
表 紙:3枚合紙(MAG プレーン+チップボール+MAG プレーン)
本 文:シルバーダイヤ
印 刷:LED-UV 230線
book06―The Exhibition Catalogue
仕 様:糸かがり並製本に表紙貼り付け 88頁
表 紙:3枚合紙(MAG プレーン+チップボール+MAG プレーン)
本 文:シルバーダイヤ
印 刷:LED-UV 230線