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カテゴリ:展覧会・イベント情報

京都での視聴覚芸術の展覧会「AMBIENT KYOTO」にサンエムカラーが協力

2023.10.6  展覧会・イベント情報  , , ,



音楽を中心にした京都の新しい展覧会

10月6日から開始となる、視聴覚芸術の展覧会「AMBIENT KYOTO 2023」に、サンエムカラーは協力をしています。

AMBIENT KYOTOは、昨年2022年、第1回目として、アンビエントミュージックの創始者ブライアン・イーノの展覧会「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」を、京都を舞台に開催し成功を収めました。

第2回目となる「AMBIENT KYOTO 2023」は、日本が世界に誇るアーティスト、坂本龍一、高谷史郎、コーネリアス、バッファロー・ドーター、山本精一による作品が出展されます。展覧会の会場は、昨年と同様、京都中央信用金庫 旧厚生センター、京都新聞ビル地下1階の2会場で行われます。

サンエムカラーでは、本展の広報物とグッズの一部(ポスターとステッカー)を製作しています。

「AMBIENT KYOTO 2023」内覧会の様子

著名なミュージシャンのライブも開催

今年は会期中にライヴを開催します。アンビエント・ミュージックに多大な影響を与えた、ミニマル・ミュージックの巨匠テリー・ライリーが、東本願寺・能舞台で10月13日(金)と14日(土)にライヴを行います。

今回のキー・ヴィジュアルを手掛けたのは、アイスランド出身の世界的バンド、シガー・ロスのアルバム『Takk…』などのアートワークを手掛けてきたアレックス・ソマーズ。ロゴデザインは、グラフィックデザイナー、田中せりが担当しています。

このように、音楽(アンビエントミュージック)にまつわるプロフェッショナルが京都に集う展覧会になります。

アンビエントとは

アンビエントミュージックは、オンラインの辞典には下記のように書かれています。ゆったりとしたリラックスできる曲調が特徴です。

アンビエント‐ミュージック(ambient music)
作曲家や演奏者の意図を主張したり、聴くことを強制したりせず、空気のように存在し、それを耳にした人の気持ちを開放的にすることを目的にした曲。シンプルで静かなメロディーを繰り返すものが多い。英国の音楽家ブライアン=イーノが1970年代に提唱。環境音楽。

視覚だけでなく、聴覚も楽しめる展覧会になるので、芸術の秋を楽しむひとときになるかと思います。ぜひご来場ください。

 


前回のプロモーションムービー。空間全体を展示作品として捉える体験ができます

 

関連展「アレックス・ソマーズ個展」

AMBIENT KYOTO 2023のキーヴィジュアルを制作したアレックス・ソマーズの個展が、10月14日(土)から10月31日(火)まで開催されます。

会場は、京都のヴィーガンカフェ Stardustが手がけるギャラリー Elbereth。

古い和紙に印刷された、アレックスによるキーヴィジュアルを含めた全16作品が、アンティーク・フレームに額装され、展示・販売され、サンエムカラーが印刷を担当しています。アレックスによる映像作品も展示されます。

 

「AMBIENT KYOTO 2023」開催概要

AMBIENT KYOTO 2023(アンビエント・キョウト2023)

参加アーティスト:
[展覧会] 坂本龍一 + 高谷史郎、コーネリアス、バッファロー・ドーター、山本精一
[ライヴ] テリー・ライリー、コーネリアス
[朗読] 朝吹真理子

会場:
①京都中央信用金庫 旧厚生センター(展覧会)
②京都新聞ビル地下1階(展覧会)
③東本願寺・能舞台(ライヴ)
④国立京都国際会館 メインホール(ライヴ)

会期:
2023年10月6日(金)- 12月24日(日)*休館日:11月12日(日)、12月10日(日)
テリー・ライリーのライヴ実施日:10月13日(金)、10月14日(土)
コーネリアスのライヴ実施日:11月3日(祝・金)

開館時間:9:00-19:00 入場は閉館の30分前まで

https://ambientkyoto.com/

主催:AMBIENT KYOTO 2023 実行委員会(TOW / 京都新聞 / Traffic / 京都アンプリチュード)
企画・制作:TOW / Traffic
協力:文化庁 / α-station FM KYOTO / 京都 METRO / 株式会社サンエムカラー / Olfactive Studio Ne
後援:京都府 / 京都市 / 公益社団法人京都市観光協会 / FM COCOLO
音響機材協賛:Genelec Japan / ゼンハイザージャパン / Bose / 静科
映像機材協賛:bricks & company / Magnux
技術協力:パナソニック株式会社
協賛:Square
広報協力:HOW
特別協力:京都中央信用金庫

 

関連展「アレックス・ソマーズ個展」開催概要

アレックス・ソマーズ個展

開催期間:10月14日(土)〜10月31日(火)営業時間:12:00 – 18:30

会場:Elbereth / エルベレス  京都市北区紫竹牛若町1-2

http://stardustkyoto.com

https://www.instagram.com/elbereth_stardust

https://www.instagram.com/stardust_kana/

 

「T3 Photo Festival Tokyo」での「Print House Session」に10月8日9日に出展します!

2023.10.3  展覧会・イベント情報, 業務実績, 作品制作, お知らせ  , , ,

印刷所とデザイナーのコラボレーション

サンエムカラーとデザイナーが一緒に制作した写真集がフォトフェスで販売されます。

2023年10月に東京駅周辺で開催される、屋外型国際フォトフェスティバル「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」。その中で、写真集に特化したブックフェア「Print House Session」が10月8日、9日に行われます。

このブックフェアでは、4つの印刷会社と4人のデザイナーがタッグを組み、写真家・奥山由之さんの冊子をそれぞれ作るプロジェクト「Print House Session」が開催。

奥山由之さんから写真作品「windows」を提供していただき、それを4つのチームが独自の解釈で編集制作し、Photobook JPの開催期間の2日間、作品を限定販売するというプロジェクトです。

制作過程をブログで公開

印刷会社4社をメインに、写真集を同時に制作するという珍しいプロジェクト。サンエムカラーならではの写真集をイベントの開催日までに作ることになりました。

サンエムカラーが主催者に紹介されてチームを組むことになったのは、現代美術関連で活躍中のデザイナー岡﨑真理子さん
Print House Sessionのnoteに、制作過程の記事が公開されていますので、ご覧ください。

印刷会社紹介 サンエムカラー

サンエムカラー×岡﨑真理子

サンエムカラー × 岡﨑真理子 その2

 

完成した写真集「OPTICAL TACTILITY / WINDOWS」


こちらが完成した冊子です。透明な質感のガラスや細かい網戸の質感をプリント。


「OPTICAL TACTILITY / WINDOWS

判型:A4
頁数:32p
綴じ方:中ミシン綴じ
用紙:表紙 G-PET L判 200μ
   本文 SA金藤+ 菊 93.5kg (四六135kg)
印刷方式
本文:デジタルプレス Jet Press 750S
表紙:カサネグラフィカ(UVプリント)
価格:2200円(税込)

奥山由之さんによる窓ガラスを大量に撮影した写真群「windows」を、窓ガラスの質感や、窓ガラス越しに抽象化する室内の見え方を再解釈して制作しました。表紙と本文の異なる冊子が3種類あり、合計限定500部です。
表紙は、作品内の型ガラス、すりガラス、網戸の質感を取り出し、UVプリンタで再現しています。ガラスを再現した質感のある透明な表紙を捲ることで、光沢や像のボケ、モアレなどの変化をお楽しみいただけます。
本文は、ガラスの質感にフォーカスしたレタッチを大胆に施しています。
製本は、銀糸を用いた中綴じミシンで、表紙の硬いペット素材ごと縫って製本しました。



 

デザイナー岡崎真理子さんのコメント

「奥山さんによる「windows」の大量の写真データをいただいて、その中から今回のアートブック用のセレクトをしていく段階で、セレクトから印刷まで何か一貫した方針を持って特定の視点にフォーカスしたものが作れないかと考えました。
「windows」の写真群は、「不透明の窓」という一つの切り口で切り取られていながら、まさに東京の街のような雑多な集合体で、それが魅力の作品でもあると思います。既に発行されている写真集でその魅力は十分に表現されていると思ったので、今回はかなり大胆に偏りのあるセレクトと印刷をして、全く違う側面からこの写真群の魅力を掬い出せないかと考えました。
タイトルの「Optical Tactility」とは光学的触覚というような意味で、目で見ているのに触っているような感覚を得られるようなものを目指しました。ガラスの向こう側の情報量が少なく抽象的に見えるもの、手前が明るくて奥が暗い光環境のもの、ガラスや網戸などが触覚的に特徴のあるものなど、見る人がテクスチャにフォーカスしやすい写真のみを意図的に選び、サンエムカラーさんとの対話の中で、それらの写真を表現するのに最適な印刷方法が決まっていきました。
触覚性を強調するように印刷技術を駆使した表紙は、ガラスや網戸のレイヤーが写真から抜き取られ、文字通り触れる物質として表現されています。一方本文は、サンエムカラーさん独自のチューニングを施されたジェットプレス機を使い、ガラスの凹凸や、反射/透過する光などを強調した、「目で触る」ようなイメージ群になっています。
サンエムカラーさんとお仕事したのはこれが初めてだったのですが、写真の中から特定のテクスチャのみを抜き出す技術や、細やかなレタッチなど、印刷技術のみならずそこに至るまでの画像処理の技術の高さにも感激しました。
とても楽しいセッションでした! 色々な方に手にとっていただきたいです」

サンエムカラー・プリンティングディレクター大畑のコメント

「ガラスや網戸の質感にフォーカスし、赤々舎さまから発刊された写真集『windows』とはまた違った視点の一冊になったと思います。岡崎さんのアイデアとサンエムカラーの技術がピタッとハマった感じになりました。ぜひ手にとって表紙を触ったり、開いたり閉じたりしてみてください」

サンエムカラー・プリンティングコーディネーター寺本のコメント

「奥山さんの写真を岡﨑さんが大胆に解釈し、印刷も弊社で絶賛売り出し中のレアな機械を使って作りあげたzine!! かなり素敵にできあがってきています! ずっとワクワクしながら作りました」



こちらメイキング動画になります。現場の臨場感をお楽しみください。

印刷会社4社と4人のデザイナー

サンエムカラーの他に参加する印刷会社とデザイナーは下記になります。こだわりのある印刷会社と活躍中のデザイナーが制作中した冊子が会場で購入できます。

東京印書館 田中義久

LIVE ART BOOKS  /  上西祐理

山田写真製版所 Aaron Nieh


Print House Sessionの運営は、写真専門の書店flotsam booksと、写真専門の出版レーベルroshin booksが務めま
す。2019年にも開催され、前回のブログはこちらです。

会場への来場が難しい方は、セット販売になりますが、オンラインで購入できます。

今回販売される冊子は、各社ともに一押しの印刷技術を用いて制作しているので、どれも一見の価値ありです。なお、当日の会場ではブックフェアや展示も行われますので、さまざまな写真表現に触れることができます。

写真に興味ある方は会場で手にとっていただけましたら幸いです。

Print House Session開催情報


「T3 Photo Festival Tokyo」

日時:2023年10月8日(日) – 9日(月)11:00-17:00
会場:東京スクエアガーデン 1F 貫通路 
〒104-0031 東京都中央区京橋3-1-1
http://tokyo-sg.com/access/
ウェブサイト:https://t3photo.tokyo/

Print House Session関連展示

今回、Print House Sessionに参加する印刷会社LiveArtが、ギャラリー「LAG(LIVE ART GALLERY)」を2023年9月より神宮前にオープンしました。Print House Sessionとのコラボレーション展「「Print House Session x Yoshiyuki Okuyama x LAG」」を10月13日(金)から開催です。T3に参加できなかった方は、こちらにぜひ。

「Print House Session x Yoshiyuki Okuyama x LAG」

2023年10月13日(金)-11月11日(土)
会場:LAG(LIVE ART GALLERY)/ 〒151-0001 東京都渋谷区神宮前2-4-11 Daiwaビル1F

https://www.live-art-books.jp/lag/exhibition/print-house-session/

Art Direction of Exhibition:上西祐理
ArtBook Collaboration Project:
サンエムカラー x 岡崎真理子
東京印書館 x 田中義久
山田写真製版所 x Aaron Nieh
LIVE ART BOOKS x 上西 祐理

協力:roshin books, flotsam books, サンエムカラー、東京印書館、山田写真製版所

【LAGイベント開催のお知らせ】

奥山由之 x 上西祐理 トークイベント
会場:LAG(LIVE ART GALLERY)
日時:2023年10月21日(土)13:00-予定

定員:限定50名
お申込み方法等の詳細は、追ってWEB/SNSにてお知らせ致します。

https://www.instagram.com/lag_liveartgallery/

「KAAT EXHIBITION 2023 浅田政志 展」カタログを、サンエムカラーオンランショップで販売開始

2023.10.2  お知らせ, 展覧会・イベント情報, SunM Color News  , ,


ユニークな写真を撮影する人気写真家の一冊


KAAT EXHIBITION 2023「浅田政志展|YOKOHAMA PHOTOGRAPH -わたし/わたしたちのいま-」が、2023年9月3日(日)~10月1日(日)まで、KAAT神奈川芸術劇場にて開催されました。サンエムカラーでは、カタログなどの印刷を担当しました。

本日から限定カタログをオンラインショップで販売します。
https://www.sunm.co.jp/shopping/457.php

映画「浅田家!」のモデルになった写真家 浅田政志さん、新作撮り下ろしによる初の劇場での個展。写真発祥の地で、過去から現在へと時代を超えて、神奈川に暮らす人々の貌(かたち)を写し出した内容です。見応え・読み応えのある一冊、ぜひ手に取ってご覧ください。

[カタログ]
アートディレクション:北原和規
執筆:浅田政志・長塚圭史・中野仁詞
印刷:株式会社サンエムカラー
発行:KAAT神奈川芸術劇場

限定カタログの中身を一部ご紹介

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「KAAT EXHIBITION」は、KAAT神奈川芸術劇場の劇場空間と現代美術の融合による新しい表現を展開するKAAT独自の企画シリーズです。8回目となる本展は、写真家・浅田政志が「わたし/わたしたちのいま」をテーマに、神奈川の人たちと共に作り上げた新作撮り下ろし作品を展示します。横浜は幕末から明治にかけて、写真の技術が伝わった日本の写真発祥の地の一つで、モノクロ写真に彩色をほどこした「横浜写真」が生まれた場所でもあります。当時、写真は極めて貴重なものでした。技術の発展により、誰でも気軽に写真を撮影することができるようになった現代において、浅田は代表作である家族写真シリーズを通してたった1枚の写真に思いを込める大切さを伝え続けています。

今回、浅田の新たな試みとして、横浜写真の表現を現代に導き、過去から現在へと時代を超えて変容する写真の存在と、神奈川県に暮らす人々の「いま」の貌(かたち)を鮮やかに写し出します。(展覧会公式サイトより抜粋)

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https://www.kaat.jp/d/yokohama_photograph

展覧会の様子を一部ご紹介

 

アートフェア「UNKNOWN ASIA 2023」にて、弊社クリエイティブディレクターがレビュワーとして参加

2023.9.21  お知らせ, 展覧会・イベント情報  , , ,

140の出展のあるアートフェアが大阪で     

日本とアジア各国からアーティストが大阪に集う国際色豊かなアートフェア「UNKNOWN ASIA 2023」が開催されました。弊社クリエイティブディレクター木村浩がレビュワーとして参加したレポート記事になります。

アートフェア「紀陽銀行 presents UNKNOWN ASIA 2023」は、2015年からスタートし今年で9回目を迎え、2023年度は9月15日(金)から9月17日(日)の3日間行われました。

アジアのアートシーンの熱量を体感

今回の開催にあたり、多数のエントリーの中から厳選なる審査を経て、アーティスト並びにギャラリーブース計140が出展。昨年に続き、会場はグランフロント大阪ナレッジキャピタルコングレコンベンションセンター。

新進気鋭のアーティストたちが作品を展示、プレゼンテーションを行ない、ジャンルはファインアート、イラストレーション、グラフィックデザイン、フォトグラフィーなど多岐に渡り、今年度も多種多様なアーティストが一堂に会しました。特に今年は“アジアとの再会の年”。アジアのアーティストや審査員が再び大阪に集まりました。

弊社・クリエイティブディレクターが作家に投票

UNKNOWN ASIAでは、第一線で活躍するアートディレクター、ギャラリスト、プロデューサーを審査員として国内外から招聘。全員の投票によりグランプリを決定します。

弊社・クリエイティブディレクターの木村浩が、レビュワーとして昨年に引き続き参加しました。木村は、写真界の芥川賞と呼ばれる木村伊兵衛賞を受賞した作品を手がけ、 近年はアーティストの作品制作を行う社内プロジェクトを立ち上げるなど、 関西を中心にアートに関する案件に数多く携わった経験を活かしてレビューをしました。

今回数多く出展した作家の中から木村が選んだ作家は、久保木要さん。未知の文明をテーマに、複数のパーツを組み上げることで一体になる、出土品をモチーフとした陶作品を制作しています。今回の展示作品は、切り抜いたアクリル板に貼り合わせた彫刻作品になります。

弊社・木村浩からのレビュー。

[1-06]久保木要/KUBOKI Kaname

土偶などからインスピレーションを得て、独特のセンスで形付けられたアクリルパーツを何枚も積層させ光を投影することでひとつの作品を完成させる。新しい形の版画的な作品だと思った。今後の作品と活躍に期待!

レビュワー賞を受賞。おめでとうございます! 

久保木要さんのWebサイトはこちら。アクリル以外のメディアを使った作品も見られます。今後の活躍が楽しみです!
https://kanamekuboki.com/
https://www.instagram.com/ino_yho/

BLK galleryで、9月23日〜10月15日に個展があるので、見逃した方は是非!


アートに興味がある方はもちろんのこと、アート初心者の方、またこれからアーティストを目指したいという方は、次回のUNKNOWN ASIAの会場に足をお運びください!

開催情報(終了)

紀陽銀行 presents UNKNOWN ASIA 2023
日時:
2023.9.16[sat] 10:00 – 20:00
2023.9.17[sun] 10:00 – 17:00
2023.9.15[fri] 15:00 – 20:30 VIP PREVIEW (関係者、招待者のみ)
場所:
ナレッジキャピタル コングレ コンベンションセンター
大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪 北館 B2F

https://unknownasia.net/
https://www.instagram.com/unknown_asia
https://twitter.com/Unknown_Asia
https://www.facebook.com/unknownasia

写真家・横山隆平、彫刻家・長谷川寛示、作品制作のために来社

2023.5.22  立会いにいらっしゃいました!, 業務実績, 作品制作, 展覧会・イベント情報, カサネグラフィカ  , , , , , ,


アーティスト2名による印刷立ち合いのレポート

サンエムカラーでは、美術館やギャラリーで展示をするアーティストが来社して、作品制作を行うことがあります。今回はアーティストとコミュニケーションを取りながら、紙以外のさまざまなメディアにプリントを行い、作品が完成していく過程をお届けします。サンエムカラーのスタッフは美術関連の印刷を日々行っているので、そこで培ったスキルを発揮する腕の見せ所です。

 

先日、写真家の横山隆平さん彫刻家の長谷川寛示さんが、それぞれの個展に向けた作品制作のため、共にサンエムカラーの京都本社に来社しました。

横山さん、長谷川さんは京都市京セラ美術館で現在開催中の「特別展 跳躍するつくり手たち」で、それぞれの作品を展示するだけでなく、共作も展示しています。また、お二人ともサンエムカラーの印刷技法「カサネグラフィカ」を使って作品を制作することから、今回揃っての制作立ち会いが行われました。今回使われる技法のカサネグラフィカは、メディアにインクを何層も「重ね」て塗ることで、独特の質感を作品にもたらします。

一日がかりの作品制作は、横山さんからスタートしました。

 


横山隆平「WALL cutout / BLIK #01#02」制作風景

横山さんは、サンエムカラーが大判のUVプリンタ「スイスQプリント」を使ったカサネグラフィカの技法を始める前から、これまでに多くの作品のプリントを行ってきました。

今回の横山さんの新作「BLIK」は、鉄板に木枠を取り付けたメディアに、顔料箔やスプレーを施し、その上にカサネグラフィカでプリントを行いました。

今までにいくつもの作品をカサネグラフィカで制作してきた横山さんは、プリントの特性を熟知しており、データづくりから出力方法まで十分に心得ています。プリントするデータの処理も、これまでの経験から横山さん専用にチューニングされたICCプロファイルで変換して、数回のテストプリントを経て本番を行いました。

横山隆平「WALL cutout / BLIK #01#02」完成。

 


横山隆平「WIND [No. 05 May 6, 2023]」制作風景

もうひとつの作品「WIND」は、アルミボードにハーネミューレ紙を貼ったメディアに、顔料箔とスプレーを施してから、プリントを行いました。

このプリント方法は過去にも行っていて、今回は過去の作品と同じ風合いになるように調整してからプリントをしました。

プリントは焼き込みのような方法をとっていて、数回の塗り重ねで意図した仕上がりになるように調整しています。

今回のメディアとなるアルミと顔料箔、スプレーの上へのプリントは、インクの乗り方が異なります。仕上がりを確認しながら、横山さんの望んでいる調子の部分を塗り重ねていきます。

写真制作の基礎である暗室でのプリント現像の焼き込み、シルクスクリーンの追い刷り、そういった手仕事のようなことをデジタルを介して行なう作業は、毎回面白いなと感じています。

横山隆平「WIND [No. 05 May 6, 2023]」完成。

 


長谷川寛示「bottle to bottle」制作風景

以前、長谷川さんは木彫りの植物の葉の上に、テキストをプリントする彫刻作品を制作しました。今回は彫刻作品ではなく、本銀箔とカラーを施した木枠にモノクロのプリントを行います。

仕上がりのイメージの確認のため、まずフィルムにプリントをして、それを木枠に重ねて確認を行いました。モノクロ作品を二階調にした作品は、画像処理やRIPの工程で余計な色分解をしないよう、また風合いが変わらないように処理を施しました。

何度かのトライアンドエラーのなかで生まれたアイデアにより、わざと二階調の生成を荒らす処理を試み、味わいや色気の良さからその方法で最終的に決定をしました。

作家とのディスカッションによって、長谷川さんの作品がブラッシュアップされる瞬間は、この場でなければ起こりえないので、作品の生み出される面白みを感じました。

 

プリントしてみないとわからない

プリントの方針が決まり、テストピースのプリントを行いました。

フィルムの上にに乗せるのと、実際にプリントするのでは、風合いが変わることが予想されるので、まずは本番前に小さいテストピースを制作します。テストピースへのプリントは、フィルムよりも軽い仕上がりになるので、その変化量を逆算してから本番を行いました。

 

引き算の設計

一般のインクジェットプリンタは、モノクロデータでプリントするとカラーインクを含んだ分色を強制的に行います。カサネグラフィカでは、モノクロ作品の場合、黒インクのみや墨基調の分版のような印刷の製版に近い処理を行います。どちらにも長所と短所があります。

当初は黒インクの上にニスを乗せる予定でしたが、銀箔と黒インクの馴染みが良く、ニスを加えると質感に差を与えすぎるという判断から、黒インクを乗せるだけの設計になりました。

この引き算の判断は、工程や手数を増やして付加価値を付けるという発想でなく、良い作品をつくるための思い切った判断で個人的にグッときました。

長谷川寛示「bottle to bottle」完成。

完成した作品は梱包を施した後に、個展が行われる東京のギャラリーへと旅立って行きました。京都、東京の会場で、横山さん、長谷川さんの実際の作品をご高覧ください。

 

サンエムカラーでは、アーティストが構想する作品を具体化するために、印刷技術や作品の方向性を意見交換をしながら、作品制作の協力を行っています。連絡いただけましたら、より良い作品を世に出すためのお手伝いをさせてください。

 


展覧会情報

横山隆平「CITY from the WIND / Carpe diem」
KANA KAWANISHI GALLERY(東京)
2023年6月3日〜7月1日
https://www.kanakawanishi.com/gallery

長谷川寛示「decey,remains」
KANA KAWANISHI GALLERY(東京)
2023年5月27日〜6月24日
https://www.kanakawanishi.com/exhibition-041-kanji-hasegawa

「特別展 跳躍するつくり手たち」
京都市京セラ美術館(京都)
2023年3月9日〜6月4日
https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20230309-20230604
横山さん、長谷川さんそれぞれの作品と共作が展示中。