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石内都さん 個展『肌理と写真』

2017.12.21  展覧会・イベント情報, 立会いにいらっしゃいました! 

アジア人女性として初めてハッセルブラッド国際写真賞を受賞するなど、
現代写真界において最も重要な写真家の一人、石内都さんが、
12月9日より横浜美術館にて開催中の個展『肌理(きめ)と写真』の図録の
印刷立会いに11月16日にいらっしゃいました。

 


▲刷り上りの確認をする石内さん(中央)と、出版社・求龍堂の三宅さん(左)。

 

 

立会いの取材に伴い、今回の展覧会の趣旨や石内さんの写真に
対する向き合い方など、様々な貴重なお話をお聞きしました。

 


▲取材に応じてくださった石内さん。

『肌理と写真』が開催される2017年は、
石内さんの写真家としてのキャリアの実質的な
スタートとなった個展『絶唱、横須賀ストーリー』より40年を
数える年です。その間、様々な被写体にカメラとともに
向き合ってこられた歴史を表すように、展覧会では
初期から現在、未発表に至るまでの作品が、テーマを
「横浜」「絹」「無垢」「遺されたもの」の4つに分けて展示されます。

 

展覧会タイトルにある「肌理」は、デジタルにはない
フィルムプリントならではの「印画紙を染める感覚」で
生み出される粒子が詰まった黒、散った白を表したキーワード。
同時に、石内さんの作品で一貫して捉えられている、建物や人、遺品の表面に
込められた長い時間の層を表す言葉でもあります。

同じくタイトルにある「写真」という言葉について
石内さんはご自身のことを繰り返し
「写真から自由」であると表現されていました。

大学で染織を専攻されていた石内さんにとって、
写真の道は完全なる独学から始まりました。
カリキュラムのある中で学ぶということがなかったので、
例えばカメラの構え方であったり、写真を
学んだ人にとっては基本ルールのようなものになっていることに
縛られずに、失敗を重ねながら独自のスタイルで写真を続けてこられたことが
「枠に囚われない自由な写真」を生み出してきたのではと言われています。。

近年の作品である『Mother’s』シリーズに始まる遺品を
撮影した連作は、「遺されたもの」というテーマのもとに展示されています。
2005年のヴェネチア・ビエンナーレで出品された『Mother’s』は、
母親の遺品を撮影したシリーズ。
この出品がフリーダ・カーロの遺品を撮影した『Frida by Ishiuchi』、原爆で亡くなった人々の
遺品を撮影した『ひろしま』シリーズへとつながりました。
メキシコや広島へは、「母が連れて行ってくれた」とおっしゃいます。

 


▲立会いの最後には無事にOKのサインをいただき(上)、
印刷機の横でポーズをとってくださいました。

 

横浜には、デビュー以来自らの手でモノクロプリントを
作り続けてこられた暗室があります。
2018年1月には群馬県桐生市に移られるということもあり、
今横浜という地で展覧会を開くことは、
石内さんにとって大きな意味があるということです。

 

世界で活躍する写真家の原点なる地で、作品が纏う時間の肌理を感じてみてはいかがでしょうか。

 

 

石内都『肌理と写真』GRAIN AND IMAGE

会場:横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
会期:2017年12月9日(土)〜2018年3月4日(日)
10時~18時(入館は17時30分まで)
   *2018年3月1日(木)は16時まで
*2018年3月3日(土)は20時30分まで
(入館は閉館の30分前まで)

休館日:木曜日 *ただし、2018年3月1日を除く
年末年始(2017年12月28日[木]~ 2018年1月4日[木])

 

 

図録 『肌理と写真』

著者:石内都
出版社:求龍堂
仕様:Y177xT252・薄紙上製本・252頁
定価:2700円(税抜)