印刷職人のしごとばTOPICS

No Museum No Life? ― これからの美術館事典

2015.8.4  展覧会・イベント情報 

本日は国立美術館コレクションによる展覧会「No Museum No Life? ― これからの美術館事典」と
その図録をご紹介します。coverこちらの展覧会は美術館そのものをテーマにしており、多様な画法や時代にわたる作品が集結しています。美術館の機能や着想、美術館を取り巻く社会などを表現したA-Zで始まる36のキーワードをもとに作品が並び、
まるで美術館に関する大きな事典の中を歩いているかのような気分が味わえる仕掛けになっています。index

図録も展覧会の世界観に呼応して、外観から中の記載まで事典のようにできています。
展覧会と同様に、作品はA-Zのキーワードごとに掲載されています。

definition

どのようなキーワードが使われているのかが気になるところですが、一部を挙げるとArchitecture(建築)、
Beholder(観者)、Conservation(保存修復)、Frame(額/枠)、Light(光/照明)、Original(オリジナル)、Zero(ゼロ)などがあります。

contents

美術館という存在を探るテーマが新鮮で奥深く、遊び心のある演出が魅力的な展覧会です。
ぜひとも一度足を運び、図録も手に取っていただきたいと思います。

============================================================
『No Museum No Life? ― これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会』
会   場    東京国立近代美術館
〒102-8322
千代田区北の丸公園3-1
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/no-museum-no-life/
開催期間    2015年6月16日(火)~9月13日(日)
10:00~17:00 (金曜日は20:00まで開館。閉館30分前まで入館可能。)
休館日: 月曜日 (但し、祝日・振替休日の場合は開館し、翌日休館です。)
============================================================
『No Museum No Life? ― これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会 図録』
編集       東京国立近代美術館
発行       独立行政法人国立美術館
デザイン     neucitora (刈谷悠三、角田奈央)
印刷       株式会社サンエムカラー
仕様       A5変形 380ページ
============================================================

最後に、図録のデザインに取り組まれた、

neucitoraの刈谷さんからコメントをいただくことができましたので、ご紹介します!

「東京国立近代美術館で開催中の「No Museum, No Life? ― これからの美術館事典」の図録です。

2015年の1月に東京国立近代美術館より相談を受けた時点では、
A-Zまでのキーワードで整理された「事典のような空間」の展覧会という条件のみ決定していました。
そこでは、コレクション展であると同時に美術館そのものの展覧会であることから、
広報物/展示空間/図録──つまり「美術展」に必要なグラフィックデザインの全てを
少し引いた視点でもう一度読みなおすことも必要でした。

デザインとしては「インデックス」という事典の整理方法を徹底的に使いつつ、
新たな読み替えを示唆する別の層として、蛍光色を重ねあわせる構成を基本としました。
また、2色で印刷されたページや広報物の用紙は、実際に辞典でよく使用される紙という指定の中から
「トモエリバー」をご提案いただき、とても薄いのに裏透けが少なく不思議な浮遊感を実現できました。

ポジや紙原稿やデータなどの多岐にわたる大量の素材を的確に処理され、
さらに蛍光色+4色印刷の作品ページの印刷管理はとても難易度が高いにもかかわらず、
それをサラッと満足のいくレベルで色校正を出していただけました。

造本についても大きく助けられました。
特に表紙のクロスについては、こちらで探した限りでは納得のいく色味が見つからない中で
意図を正確に汲んでいただき最終案のオレンジをご提案いただきました。
一刻の猶予も許されないヒリヒリするスケジュールの中で(笑)、
束見本を2度出していただき、さらに2度目には表紙の箔押しも含めていただき
ギリギリのタイミングで先方とその場で即決することができました。

モノとしては、オーソドックスな事典の佇まいでありながら
造本の技術や蛍光色の重ねあわせにより
各要素を批評的に読み替えた新しい事典として実現できました。

最後に、営業の前川さんの迅速な対応には多々助けられました。
ありがとうございました。」