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「等伯の説話画 南禅寺天授庵の襖絵」

2015.4.7  印刷作品アーカイブ 

本日は、「等伯の説話画 南禅寺天授庵の襖絵」(青幻舎)をご紹介します。

表紙

南禅寺天授庵に収蔵されている、長谷川等伯晩年の名作といわれる三十二面の襖絵。
「商山四皓図」八面、「松鶴図」八面、「禅機図」十六面から成り、禅宗にゆかりのある主題・説話が描かれています。
2009年より東京芸大の須賀みほ先生のもと6年がかりで記録撮影・造形研究が進められてきました。その成果としてデジタル技術による複製が制作され、先月31日に南禅寺天授庵に奉納されたことがニュースにもなりました。

本書は、その調査研究の成果を基にしてまとめられた図録です。
32面からなる襖絵すべてが、実際の配置構成にしたがって紹介されています。
画像と対応して、描かれた図像や説話の解説も収録されています。

商山1

商山2

商山3

「商山四皓図」より。全体配置・各作品の大きな画像・実際に室内にしつらえた様子が収録されています。

襖絵は、空間全体が物語を構成する空間芸術。
鑑者の目線の変化や、襖の移動によっても表情が変わります。
須賀先生は、南禅寺天授庵の襖絵を「等伯自身の大成の作であるとともに、日本のナラティブアートの傑作」と評します。

南禅

表紙に使われている猫は、〈禅機図〉の一場面〈南泉斬猫図〉より。
解説によると、題名のとおり、このあと猫は・・・

コミカルにも見える自在な筆致で、巧みにモチーフを描き分けていることが分かります。

南禅アップ

こちらは上のページの拡大。
研究の一環として撮影された画像だけあって、細かな筆致のみならず、貼り合わされた和紙の厚みや、表面が剥がれ落ちた跡までくっきり。

今回も、印刷には高精細のFMスクリーンを採用。数多くの国宝級の書画のレプリカを手がけてきた弊社相談役・松井勝美自らが陣頭指揮をとり、印刷にあたりました。

寄って、引いて、その場にいるように作品を体感できる一冊です。

南禅寺天授庵に奉納された襖絵は、今月12日まで公開中。
本書で予習をしてから拝観されてはいかがでしょうか。

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『等伯の説話画 南禅寺天授庵の襖絵』
著 須賀みほ
発行 青幻舎
印刷 サンエムカラー
摺り師 松井勝美
プリンティングディレクター 谷口倍夫
仕様 A4変形 104ページ
定価 2800円+税
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