その心の穴を埋めるかのように次々に女性と恋に落ちていく光源氏と、
彼を取り巻く平安中期の貴族の世界が五十四帖にも渡り描かれた源氏物語の華麗で切ない世界を覗いてみませんか。
第一帖~第六帖
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第一帖 桐壺(きりつぼ)
帝(みかど)に大変愛された桐壺という女性がいた。桐壺は光り輝く美しい男の子・源氏を生むが、彼が三歳のとき亡くなる。帝は桐壺によく似た藤壺(ふじつぼ)を妻にし、源氏は藤壺にあこがれをいだく。
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第二帖 帚木(ははきぎ)
成人した源氏には恋人もたくさんいた。ある雨の夜の頭中将(とうのちゅうじょう)たちの話に影響され、源氏は中流の女性、空蝉(うつせみ)に恋をする。空蝉は源氏に心ひかれるが、彼を避けようとする。
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第三帖 空蝉(うつせみ)
源氏は空蝉のことをあきらめきれず、チャンスを待って空蝉の部屋へ忍んでいくが、空蝉はうすい衣(ころも)一枚を残して逃げてしまい、二度と誘いには応じなかった。源氏は残念な思いで一夜を過ごす。
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第四帖 夕顔(ゆうがお)
源氏は五条にある夕顔の花咲く家の女性と出会う。心の安らぎを求めていた源氏は彼女の優しさに触れ、二人の間はどんどん近づいた。しかし、ある荒れ邸(やしき)で会っているとき、突然、夕顔が死んでしまう。
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第五帖 若紫(わかむらさき)
病気の治療に行った北山で源氏は藤壺そっくりの愛らしい少女(若紫)に出会い、心ひかれた。そのころ藤壺が子供を宿し、源氏は密かに悩む。その年の秋若紫の祖母が亡くなり、源氏は彼女をひきとった。
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第六帖 末摘花(すえつむはな)
亡き常陸宮(ひたちのみや)の姫がひっそりと暮らしていると聞き、源氏は興味をいだく。訪ねてみると、姫の古風な服装と赤くたれ下がった鼻にがっかりするが、かわいそうな姫に同情し、生活の世話をする。
第七帖~第十二帖
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第七帖 紅葉賀(もみじのが)
宮中(きゅうちゅう)での舞楽(ぶがく)のリハーサルで、源氏と頭中将はすばらしい舞を舞う。翌年、藤壺は源氏そっくりの男の子を産み、何も知らない帝は手放しで喜ぶ。しかし、源氏と藤壺は罪の意識に悩む。
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第八帖 花宴(はなのえん)
源氏が宴(うたげ)で詩と舞を披露(ひろう)した。その夜、源氏はある女性と出会う。彼女は宿敵(しゅくてき)右大臣家(うだいじんけ)の朧月夜(おぼろづきよ)で、皇太子(こうたいし)の婚約者だった。
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第九帖 葵(あおい)
葵祭のとき、源氏の恋人・六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)は、正妻(せいさい)葵上(あおいのうえ)と車をとめる場所で争い、負ける。その後、葵の上はようやく男の子を産むが、亡くなってしまう。
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第十帖 賢木(さかき)
六条御息所は娘の斎宮(さいぐう)とともに伊勢へ行くことを決める。一方、桐壺院(源氏の父)が亡くなり、藤壺は出家(しゅっけ)する。右大臣家の力が強まるなか、朧月夜との関係が右大臣方に知れる。
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第十一帖 花散里(はなちるさと)
最近のいやなことに思い疲れた源氏は、ふと思い出して昔の恋人、花散里の家を訪れる。途中、中川のほとりに住む関わりがあった女に連絡するが、返事はない。花散里は心おだやかでやさしく、源氏の心も安まる。
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第十二帖 須磨(すま)
朧月夜のことで右大臣家の怒りをかった源氏は、みずから都を去る。妻の紫上(むらさきのうえ=若紫)との別れはつらく、訪ねてくる人もない須磨の暮らしは寂しい。都の人々との文通だけがなぐさめだった。
第十三帖~第十八帖
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第十三帖 明石(あかし)
大嵐の夜の亡き父の夢のお告げに従い、明石に移った源氏は、明石の君(明石上)と結ばれる。都では不吉なことが続き、新しい帝(朱雀帝=すざくてい)は、源氏を呼び戻す。源氏は明石の君を残し、都へ帰る。
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第十四帖 澪標(みおつくし)
源氏の帰京後、朱雀帝は退位し、源氏と藤壺の秘密の子が冷泉帝(れいぜいてい)になる。源氏にまた春がめぐってきた。明石上は女の子を生み、伊勢から戻った六条御息所は、娘の将来を源氏にたのんで世を去る。
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第十五帖 蓬生(よもぎう)
源氏が須磨で生活していた頃、末摘花は生活に困り荒れた邸でただひたすら源氏を待ち続けた。末摘花の暮らしぶりを知った源氏は自分の態度をくやみ、二年後、二条の東院(ひがしいん)に末摘花を迎えた。
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第十六帖 関屋(せきや)
源氏は、石山寺にお参りの途中、夫とともに京に帰る空蝉と再会する。空蝉の心は再び源氏への思いにゆれ動く。その後、空蝉の夫は病気で亡くなり、この世がつらくなった空蝉は出家して尼(あま)になる。
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第十七帖 絵合(えあわせ)
源氏が世話する六条御息所の姫が冷泉帝の妻となり、権中納言(ごんのちゅうなごん)の姫と帝の愛を競う。絵を競い合う絵合で、源氏方と権中納言方の決着はなかなかつかず、源氏の須磨の絵日記で勝負がついた。
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第十八帖 松風(まつかぜ)
源氏は二条の東院に明石上を迎えようとするが、身分の違いからためらう彼女は大堰川(おおいがわ)の別荘に住む。紫上は明石上に嫉妬(しっと)するが、明石上の姫を手元で育てることを承知(しょうち)する。
第十九帖~第二十四帖
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第十九帖 薄雲(うすぐも)
明石上は姫の将来を思い、胸のつぶれる思いで手放す。翌年藤壺が亡くなり、源氏は深く悲しむ。やがて冷泉帝は本当の父が源氏であることを知り、帝の位を源氏にゆずろうとするが、源氏はかたくなに断る。
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第二十帖 朝顔(あさがお)
源氏は、昔恋こがれた朝顔の宮を訪ねたが、宮は相変わらずつれなかった。紫上は朝顔の噂(うわさ)を聞いて源氏の心変わりを心配する。ある雪の夜、紫上に今までかかわった女性のことを話して聞かせる。
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第二十一帖 少女(おとめ)
六条御息所の姫が皇后(秋好中宮=あきこのむちゅうぐう)になり、源氏は太政大臣(だじょうだいじん)となる。六条院が完成し、四季の御殿(ごてん)にそれぞれ紫上、花散里、秋好中宮、明石上が移り住む。
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第二十二帖 玉鬘(たまかずら)
亡き夕顔の娘・玉鬘は筑紫(つくし)で美しい姫に成長し、多くの求婚者をしりぞけて都に戻ってくる。長谷寺にお参りした際、源氏に仕える右近(うこん)に偶然出会い、源氏の元に身を寄せることになる。
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第二十三帖 初音(はつね)
新築の六条院の春の御殿(ごてん)はすばらしい。源氏は紫上と新春を祝い、順番に女君たちを訪れて年賀の挨拶をした。明け方、若者たちの歌や舞いを紫上に招かれた女君たちも華やかに見物した。
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第二十四帖 胡蝶(こちょう)
春の盛り、紫上の春の御殿で船遊びが行われたり、里下がりをしている秋好中宮が法会(ほうえ)を営んだり六条院は華やいだ。玉鬘の美しさは貴公子の中でも評判となり、源氏もまた玉鬘に心をひかれる。
第二十五帖~第三十帖
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第二十五帖 蛍(ほたる)
玉鬘は源氏の心を測りかねて悩む。源氏は蛍兵部卿宮(ほたるひょうぶのきょうみや)と玉鬘の仲をとりもとうとし、彼が玉鬘を訪ねた際、蛍を部屋に放ち、ほのかな光に玉鬘の容姿を浮かび上がらせる。
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第二十六帖 常夏(とこなつ)
夏の暑い日、夕涼みの源氏は、息子の夕霧や内大臣の息子らに、内大臣が引き取った姫のことを皮肉る。彼の娘・雲井雁(くもいのかり)と夕霧の仲を認めない不満からだ。また、源氏は玉鬘に和琴を教える。
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第二十七帖 篝火(かがりび)
秋になり、源氏は毎日のように玉鬘に琴を教えに行く。ある夜、篝火に照らされた玉鬘の美しさに源氏は息をのむ。源氏は夕霧と内大臣の息子・柏木を呼び合奏をする。柏木は妹とは知らず玉鬘に恋する。
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第二十八帖 野分(のわき)
野分(台風)の去った後、夕霧は六条院で偶然紫上の姿を見て、その美しさに心うばわれる。その後、秋好中宮、明石上、玉鬘、花散里のもとを見舞い、源氏と玉鬘の仲の良い間がらにおどろく。
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第二十九帖 行幸(みゆき)
玉鬘は、大原野の行幸(ぎょうこう)を見物し、優美な帝の姿に魅力を感じた。玉鬘の成人式を控え、源氏は内大臣に、玉鬘が夕顔の娘だと打ち明ける。式は立派に行われ、ついに父娘の対面がはたされる。
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第三十帖 藤袴(ふじばかま)
玉鬘が宮中で働くことが決まり、玉鬘に恋する男たちは焦りだす。夕霧でさえ藤袴の花を差し入れつつ、思いを伝えようとする。特に熱心な鬚黒大将(ひげくろのたいしょう)は玉鬘に求婚の手紙を送った。
第三十一帖~第三十六帖
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第三十一帖 真木柱(まきばしら)
玉鬘は結局、あまり好きになれない鬚黒大将と結婚した。髭黒の病気がちな正妻は心の病がひどくなり、心配した彼女の父は娘を実家に引き取る。正妻の姫は邸を去るのを悲しんだ。十一月、玉鬘は男の子を産んだ。
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第三十二帖 梅枝(うめがえ)
明石姫君と皇太子との結婚が決まり、源氏は念入りに準備を進めた。女君たちには薫物(たきもの=香)の調合をたのんで優劣を競うが、どれもすばらしく判定できない。二月、姫君の成人式が盛大に行われた。
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第三十三帖 藤裏葉(ふじのうらば)
内大臣と夕霧が和解し、ついに雲居雁との恋がみのる。明石姫君は結婚し、紫上は姫君の後見(こうけん)を明石上にゆずる。源氏は准太上(じゅんだいじょう)天皇に、夕霧も中納言となり、一門は栄華を極めた。
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第三十四帖 若菜 上(わかな)
朱雀院が出家し、源氏は女三宮(おんなさんのみや)と結婚するが、心の幼い女三宮にがっかりする。一方、柏木は女三宮に恋心をつのらせる。源氏の四十歳の祝いが盛大に行われ、翌年、明石中宮が皇子を産む。
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第三十五帖 若菜 下(わかな)
女三宮が来てから何かと心が乱れる紫上は倒れ、源氏は手当てをつくす。その間に柏木と女三宮の仲は深まり、女三宮は子供を宿した。それを知った源氏は藤壺とのことを思う。柏木は罪の意識から病気になる。
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第三十六帖 柏木(かしわぎ)
女三宮は男子・薫(かおる)を出産するが、産後の体調の悪さと源氏に対する罪の意識に苦しみ、ついに出家をする。柏木は夕霧に秘密を打ち明け、源氏の許しを願って亡くなる。源氏は宿命の恐ろしさを感じる。
第三十七帖~第四十二帖
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第三十七帖 横笛(よこぶえ)
源氏は、柏木の一周忌の供養(くよう)を盛大に行った。夕霧は、柏木の妻・落葉宮(おちばのみや)をなぐさめていたが、落葉宮の母から、亡き柏木の形見の横笛を贈られる。源氏は夕霧からその横笛を預かる。
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第三十八帖 鈴虫(すずむし)
夏、源氏は女三宮の持仏(じぶつ)供養を行い、秋には宮の御殿で鈴虫の宴を開いた。冷泉院の招きに応じた一同は、明け方まで歌を詠(よ)んで遊ぶ。秋好中宮は母の供養のために出家を願うが、源氏は反対する。
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第三十九帖 夕霧(ゆうぎり)
夕霧の落葉宮への思いは強くなるばかり。宮の母は病をおして夕霧からの手紙に返事を書くが、雲居雁が隠してしまう。返事が来ないで気落ちした落葉宮の母は急死してしまい、一方、雲居雁も実家に帰ってしまう。
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第四十帖 御法(みのり)
以前の病気から紫上の身体はすっかり弱り、出家を願うが源氏は許さない。秋になっても病状は一向に回復せず、八月、源氏と明石中宮(明石姫君)に見守られながら、静かに息をひきとる。源氏はなげき悲しんだ。
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第四十一帖 幻(まぼろし)
年が明けたが、源氏の悲しみは深い。紫上との思い出をしのびながら、その年の季節の移り変わりを過ごした。紫上の一周忌(き)をすませた源氏は、思い出の品を処分し、出家を決意して、最後の年末を迎える。
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第四十二帖 匂宮(におうのみや)
源氏亡き後、そのあとを継ぐ人はなかったが、薫と、帝と明石中宮との第三皇子・匂宮(におうのみや)とが評判の貴公子(きこうし)だった。薫は自分の出生にうすうす疑問を感じていて、どことなく影があった。
第四十三帖~第四十八帖
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第四十三帖 紅梅(こうばい)
按察使大納言(あぜちのだいなごん)には亡き妻との間の娘が二人と、再婚した真木柱(髭黒の娘)の連れ子の娘がいる。大納言は実の娘の中君(なかのきみ)を匂宮にすすめるが、匂宮はまま娘の姫に心をよせる。
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第四十四帖 竹河(たけかわ)
鬚黒太政大臣の亡き後、玉鬘は娘・大君(おおいぎみ)と中君の身の振り方に悩む。結局、大君は冷泉院の妻となり、中君は宮中で働くことになった。大君は子供を授かるが、しっとを受け実家に帰るようになる。
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第四十五帖 橋姫(はしひめ)
源氏の弟・八宮(はちのみや)は出家を望みながら、娘二人と宇治川のほとりの山荘で暮らしている。薫はここに通ううち姉の大君に心ひかれるようになる。さらに、ある使用人から出生のひみつを聞かされる。
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第四十六帖 椎本(しいがもと)
二人の姫君に興味を持った匂宮は長谷寺参りの帰り、宇治に立ち寄る。八宮は姫君たちの将来を薫にたくして亡くなる。薫は大君に、中君と匂宮の結婚をすすめながら、自分の思いを訴えるが、聞きいれられない。
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第四十七帖 総角(あげまき)
八宮の一周忌の後、薫は再び大君に思いを伝えるが、大君は薫と中君の結婚を望む。薫は匂宮と中君を結婚させるが、身分もあって匂宮は思うように宇治へ通えない。心配のあまり大君は病気になって死んでしまう。
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第四十八帖 早蕨(さわらび)
父と姉の死を悲しむ中君は一段と美しい。匂宮は中君を都に引き取ることにし、引っ越しにあたっては薫がこまごまと準備を手伝った。薫が中君のことを何かと親しく気にかけるので、匂宮は二人の仲をうたがう。
第四十九帖~第五十四帖
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第四十九帖 宿木(やどりぎ)
夕霧の娘・六君(ろくのきみ)と匂宮が結婚し、子供を宿した中君は悲しんだ。薫は中君をなぐさめるうち恋心をいだき、中君は薫の気をそらすために、大君そっくりの母違いの妹・浮舟(うきふね)の話をする。
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第五十帖 東屋(あずまや)
浮舟の母・中将君(ちゅうじょうのきみ)は結婚が破談(はだん)になった浮舟をかわいそうに思い、中君に預け、薫と浮舟の結婚を望む。匂宮が浮舟に興味を持ったので、薫は浮舟を宇治の邸に隠してしまう。
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第五十一帖 浮舟(うきふね)
薫は浮舟を京に迎えようとし、匂宮は浮舟が宇治にいることを知る。薫を装って近づいた匂宮は、浮舟と結ばれる。薫と匂宮の二人の愛の板ばさみになった浮舟は思い悩み、とうとう宇治川に身を投げる決意をする。
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第五十二帖 蜻蛉(かげろう)
浮舟のいなくなった宇治の邸は大騒ぎになり、外聞(がいぶん)をはばかって亡骸(なきがら)もないまま葬儀(そうぎ)が行われた。薫も匂宮も嘆き悲しむ。薫は中将君を思いやって四十九日の法要を盛大に行う。
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第五十三帖 手習(てならい)
宇治院(うじいん)の裏で倒れていた浮舟は、たまたま通りかかった横川(よかわ)の僧に助けられる。浮舟は自分の身元を明かさず、小野で勤行(ごんぎょう)と手習いの日々を過ごし、ついには出家して尼になる。
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第五十四帖 夢浮橋(ゆめのうきはし)
横川の僧都を訪ねて浮舟の生存(せいぞん)を確認した薫は、浮舟の弟・小君(こぎみ)に手紙を届けさせる。浮舟は心乱れるが、弟に会うことさえせず、手紙も受け取らなかった。小君はむなしく京に帰った。