製品情報PRODUCTS

Makingメイキング / ビル・アトキンソン作品集

ビル・アトキンソン氏との出逢い

アップル創設期のソフト開発メンバーとして、ハイパーカード、クイックドロー、マックペイントという数々のアプリケーションを開発した天才プログラマー、ビル・アトキンソン氏。現在、自然写真家として活躍する中、鉱物のもつ自然の色彩を見事に表現した一冊がこの「Within The Stone」である。

「発色豊かな鉱物の彩りを、そのまま表現したい…」というのが彼の要望だった。しかもインクジェットのプリンターで出力した彩りを、である。色にこだわる自然写真家としては当然の事だろうが、通常オフセット印刷では表現が困難な色味である。
画像処理をしないで、そのまま写真データを印刷できないものか──。
プリントの彩りを再現する方法が、ひとつだけある。永年、試行錯誤を重ねながら技術を磨き、ノウハウを育ててきた“サンエムカラーのFMスクリーニング”がそれである。

試行錯誤の結果

この仕事は、とてつもない「挑戦状」を叩き付けられたようなものだった。決して妥協を許さない彼の意気込みは半端ではない。最新のカラーマネジメントを駆使し、再現する手法を私たちに伝えた。しかし、この彩りを再現する事は非常に困難である。なぜなら、印刷は湿度や気温等の自然環境が大きく反映されるものである。印刷機の顔料をインクジェットの染料に、どこまで近づけられるかということで、私たちはFMスクリーニングで印刷する事を伝えた。

FMは、一定サイズの微少ドットが疑似ランダムに配置され、その密度によって画像の濃淡が表現できる。デジタルの画像でカラーマネジメントを行い、滑(なめ)らかな色のトーンを付けるのはFMスクリーニングだからこそできる技。そして紙は、刷り部分には光沢を持たせ、白場はマットな質感になる「サテン金藤130kg」を提案した。体裁は上製本。

準備が整い、いよいよ印刷にかかっていくわけだが、基本的には色校正なしの一発勝負。ひとつ気がかりだったのは、薄手の紙に通常の1.5倍の濃度を実現させるためには、裏付きが心配である。通常国内では酸化重合で乾燥させてそれを防ぐが、アメリカでは一般的にUVインキを使う。とても手間暇のかかる作業だが、この手間を惜しんでしまうと、いい仕上がりが約束できない。私たちは努力を惜しまず精通し、一枚一枚に魂を入れた。そして、試行錯誤を重ねた結果が出た。

成功の要は信頼関係

彼は、世界に認められるプログラマーではあるが、印刷に関しては、その工程や努力を知る由もない。だからこそ、ここまでやれたのではないかと今更ながらに考える。限界を知ると人は諦めが生じてしまうものであるが彼の場合は、その逆である。印刷の限界というものを知らなかったからこそ、提示できた難題である。

私たちはまず、持っているノウハウをすべて提供することで、彼との信頼関係を築いた。印刷物というのは、いってみれば私たちの作品である。与えられた仕事に自分の感性をいかに溶け込ませていくか。気持ちが通じないとできないことである。気持ちが通じ合えばいい仕事ができ、いい結果が得られるようになる。

私たちは、彼を満足させる彩りを表現することで、彼自身のノウハウをも吸収することができ、そして何よりも私たちにない独自の感性を持つ彼と仕事ができたことに大きな自信と誇りを感じている。

ビル・アトキンソン

1951年アメリカで生まれる。
カリフォルニア大学・サンディエゴ校の化学科を経て、ワシントン大学大学院で電気工学と神経科学を学ぶ。
78年、アップルコンピュータに入社後、プログラマーとして初代Macintoshの開発メンバーとなる。
97年ビル・アトキンソン・フォトグラフィを設立し、現在自然写真家として活躍中。

サンエムカラーについて

  • 摺師 松井勝美 匠の世界
  • 登録商標について
  • sunm Blog
  • オンラインショップ
  • アーティスト
  • よくあるご質問
  • 環境報告