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Makingメイキング / 木版本・源氏物語絵巻

藝術家集団による一大文化プロジェクト

平安時代後半に製作された「源氏物語絵巻」(国宝)は、誕生千年を期に解説書付きで復刻。FMスクリーンニング特色多色刷りとシルクスクリーンを併用した2版13色刷りで、詞は11版12色刷り。木版特有の細かいディティールや筆文字のかすれ等も、刻銘に再現。

原本は財団法人徳川黎明会、財団法人五島両美術館の協力で、写真家の林政夫氏が撮影して刊行。そして、復刻刊行会代表・図書出版MIZUNOの水野忠始(みずの・ただし)氏を中心に、奈良時代から千数百年の伝統ある越前和紙を漉く京都の「滝和紙店」様や、紫の帙(ちつ)で包んだ桐箱と、金の箔押しで源氏香をあしらい製本に仕立てた京都の(株)藝臺幡様、そして私たち職人の力が結集した一大プロジェクトになりました。

復刻版印刷に採用した特殊技法

通常シルクスクリーンやリトグラフといった版画技法が使われていますが、この技法では原本の顔料に近い強さと鮮やかさを持つインキで刷るため、原本に近い表現は可能でも濃淡は表現できません。また、オフセット印刷で考えると、網点の大小ですべての色彩を表現するため、和紙に印刷すると色がくすみ、調子も弱くなってしまいます。これをルーペで見ると網点が途切れ途切れになり、文字や絵柄部分がザラザラにしか再現できません。

こうした欠点を克服するために採用したのがFMスクリーニング特色多色刷りとシルクスクリーンの併用でした。特にFMスクリーニング技法では、濃淡を網点の大小ではなく、20ミクロンという微細なドット(点)の密度によって、色の濃淡はもちろん、滑らかで微少な調子が再現できたのです。
また、インキも黄・赤・青の3原色だけでなく、主に緑・オレンジ・紺・紫のインキを使い、他のインキと混ぜあわせて特別のインキを調合。特色多色刷りの技法を採用することで、原本通りの鮮やかさと強さを持った色が再現可能となりました。

伝統のもとに漉かれた紙と、高貴な色の仕立て

本書で用いた“特漉鳥の子特三号紙”は、奈良時代以来千数百年の伝統をもつ和紙の産地、特に鳥の子紙(※)の抄造地として知られる越前で特別に製作されたもの。烏の子紙はもともと書写に適し、三椏(みつまた)が原材料として実用化されると、絵画用紙として多く使われるようになっています。本紙はマニラ麻を加え、照りがなく、やわらかで、色の再現に優れた和紙になっています。
(※)雁皮や三椏の混合繊維で漉いた光沢のある優美・柔軟・緻密な和紙。墨のぼかしや垂らし込み、絵具のたまりなどに複雑な効果が得られ、襖や屏風、美人画や仏画に多く使われています。

また、仕立てについては本来は卓上鑑賞する使用から、今回は台紙のまま額に入れてインテリアとして鑑賞できるようになっています。
台紙もそのままマットとして使っていただけるよう、本紙の邪魔をしないような紙を選択。ケースは価格の点からも布の帙製を考えましたが原本の桐箱の姿がどうしても頭から離れず、今回も桐箱を使用し、それを帙で包むという体裁をとりました。帙の布は高貴な紫を使用し、上蓋には金の箔押しで源氏香をあしらいました。芸術品としての側面と商品的側面両方を併せ持つ仕立てになりました。

新しい美術を京から

図書出版の水野氏は、本書を復刻させるにあたり、京都の木版本の老舗「芸艸堂」様から、出版に至るまでの時間と費用はどれだけかかるか解らないため、出版は不可能に近いといわれたようです。 しかし、“何とか多くの人々にこの木版技術を知ってもらいたい”、その一念で、当社に話を持ちかけてこられました。
千年前、先人達が苦労を重ねて木版本を作成したように、私たち職人も力を合わせ、努力を重ねて製作に取り組みました。本書は、まさに現代の彫師・摺師が作り上げた後世に残る一大プロジェクトです。 最新のテクノロジーを使いながらも、伝統の職人の技が息づいた木版本製作を期に、“新しい美術を京から発信したい”と考えています。

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