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加藤 孝  写真集『日々 “HIBI” TSUKIJI MARKET PHOTOGRAPH TAKASHI KATO』

2017.11.25  印刷作品アーカイブ 

デザイン情報サイト「デザログ」の8月30日付の記事にて、
弊社で印刷を担当いたしました加藤 孝  写真集
『日々 “HIBI” TSUKIJI MARKET PHOTOGRAPH TAKASHI KATO』
について深く取り上げていただきました。

表紙の親しみやすい「日々」の文字に愛着が湧きます。

本文の文字組みや、ページネーションなど、隅から隅まで
こだわり抜かれたデザインが光る1冊です。

記事にもあるように、
『日々 “HIBI” TSUKIJI MARKET PHOTOGRAPH TAKASHI KATO』(以下『日々』)の
こだわりポイントの中には、サンエムカラーが独自に開発した印刷技法「グラ・セット・エフエム®︎」
を使って印刷されているということも挙げられます。

ここでは以前、別の製品の紹介記事にてこの技法に触れたのですが、
この機会に改めて解説してみたいと思います。

 

グラ・セット・エフエム®︎の一番の特徴は、グラビア印刷の
繊細な表現力をオフセットで再現する点にあります。

「グラビア印刷」は、金属の版に細かな凹凸をつけ
版の凹んだ部分(セル)に詰めたインキを紙に刷り取る方式です。
微細な濃淡が表現できる上に、厚みを持ったインキの質感が
出ることで知られている方法です。

このグラビア印刷の質感を、
現代の主流であるオフセット印刷、
その中でもランダムな網点でなめらかな色の変化を実現する
FMスクリーンを使って再現するのがグラ・セット・エフエム®︎です。
サンエムカラーが独自に研究・開発いたしました。
緻密な色の移り変わりに加え、
UVインキによって可能になったオフセットでのインキの厚盛りで
濃密なモノクロの世界が広がります。

 

この技法を世界で初めて用いて印刷されたのが、
細江英公《二十一世紀版 薔薇刑》(以下、『薔薇刑』)です。
(コチラから《二十一世紀版 薔薇刑》についての過去記事をご覧いただけます。)

 

『日々』は『薔薇刑』に続く、グラ・セット・エフエム®︎による印刷の2例目となります。

この上なく引き締まった漆黒の表現が、画像でもお分かりいただけるかと思います。
グラ・セット・エフエム®︎を用いたことに加え、スミ2色にグレーを重ね、
さらには仕上げのグロスニスにもスミを混ぜるなど、とにかく
黒の表現にとことんこだわりました。
画像では伝わりづらいですが、印刷面を触るとかすかにインキの凹凸が感じられるほどです。

 

デザイン、印刷技法だけでなく、現場でのインキの調整、製本に至るまで
『日々』には本当にさまざまな意匠が凝らされています。

「デザログ」にて紹介されている展覧会は残念ながら終わってしまっていますが、
ぜひ記事をお読みいただき、また機会があれば手に取ってインキの
厚みをじかに感じていただきたいと思います。

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加藤 孝  写真集『日々 “HIBI” TSUKIJI MARKET PHOTOGRAPH TAKASHI KATO』

著者:加藤 孝
企画:廣岡好和
出版社:玄光社
アートディレクション:髙谷 廉
デザイン:岩松亮太
仕様:260×260mm・ハードカバー・104頁