サンエムカラーが、作家の方と協力して
新しい写真集を作り上げるまでの様子をリアルタイムで
お届けするシリーズ「1冊の写真集が完成するまで」。
第2回目は、本機校正が刷りあがるまでの様子をお伝えします。
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前回お伝えした打ち合わせの後、
数種類の見積もりを経て全ての仕様が決定し、無事、正式に受注を
確定させていただきました。
次なる作業は、頂いたデータをもとに刷版を作り(製版)、
その刷版と本番で実際に使う予定の用紙・インキを使った
本番に近い試し刷り(本機校正)です。
前回の打ち合わせの終わりに、照井さんの作品の
フィルムを予め頂いていました。
▲作品のフィルムです。
(前回の詳しい様子は、
1冊の写真集が完成するまで①をご覧ください。
また、道音舎の北浦さんが、同じ日の打ち合わせの
様子をブログ「みちとおと取材記」に書かれていますので、
ぜひ併せてお読みください。)
その後受注が確定したので、いよいよ製版に移ります。
原稿データは、デジタルで頂くことも多いのですが、写真集や
作品集を作る場合、そのフィルムであったり、作品そのものをお借りし、
スキャン・撮影をしてデータにすることもあります。
今回頂いたのはフィルムですので、スキャンをして
デジタルデータにする必要があります。
▲弊社スキャニング室での作業です。
今回のようなフィルムや、作品本体、
つまり複製が不可能な原稿をお預かりする場合、
それらは「貴重原稿」や「重要原稿」と呼ばれます。
頂いたデータはもちろん全て大切に扱っておりますが、
貴重原稿、重要原稿を扱う際は特に慎重になります。
▲手袋をし、フィルム表面を丁寧に拭います。
次に、フィルムを分厚いラップのような透明シートに挟みます。
サンエムカラーでは、フィルムのスキャニングに
ドラムスキャナと呼ばれる、非常に解像度の高い
データが得られるスキャナを使います。
ドラムスキャナにフィルムを巻きつけるために、
この透明シートが必要なのです。
▲1本ずつ挟みます。
これがドラムスキャナです。
▲フィルムを巻いている様子です。
この透明のドラムの中からフィルムに光を当てながら、
ドラムを高速回転させてスキャンします。
▲ドラムはフィルムが見えないほどのスピードで回ります。
こうして読み取ったデータを修正・編集し、刷版に回します。
続いて、本機校正です。
冒頭で書いたように、本番と同じ紙・同じインキ・同じ印刷機で
印刷する試し刷りを本機校正と言います。
この校正をお客様に見ていただき、さらに具体的な
イメージを持っていただいた上で、本番の印刷に進みます。
ではここからは、本社から少し離れたところにある
印刷工場からお伝えしたいと思います。
工場には合わせて6つの印刷機がありますが、
今回は↓写真の機械を使います。
取材時にはすでに印刷が始まっていました。
▲オペレーターが操作します。
ほどなくして校正が出てきました。早速担当営業による色味の確認が入ります。
▲オペレーターもルーペで確認します。
フィルム原稿とは別に、色見本出力紙を
お預かりしているので、これを色見本として色を慎重に吟味します。
▲手に持っているのが色見本出力紙です。
「ちょっと黄色いですね…」
「青くしないとダメですね」
モノクロの写真を刷っているのに、
「黄色い」「青い」といった感想が飛ぶのは
不思議に思われるかもしれません。
印刷物には、基本的に4色=CMYK(青・赤・黄色・黒)の
インキが使われています。
今回の写真集は、一見黒色1色で
刷れるように思えますが、実は、より深い
色味を実現するために、黒+グレーの
2色で刷られているのです。
つまり、ここで言う「黄色い」とは、
このグレーがほんの少し理想の色より
黄色っぽいインキに仕上がっている
状態ということです。
▲画像では少しわかりにくいですが、校正(上)と原稿(下)では
煙のような部分の色が違うのが見て取れます。校正は、原稿に比べると黄みがかっています。
また、インキだけでなく、紙の色が違うことも
刷り色が違って見える原因の一つです。
▲小さい紙が色見本、大きい紙が本番で使う紙です。本番の紙の方が
黄色っぽいのがわかります。
吟味を重ねて選んだ紙なので、
この紙を使った上で最大限、色見本に近い色合いに
なるインキを作り出すことが大切です。
理想の色にさらに近づけるために
あとでインキを一から練り直すのですが、
一旦今刷っている色にインキを足し、
再び刷って様子を見ます。
印刷機の上に上がるとこんな景色です。
見えている箱のような部分にそれぞれ
インキローラーが入っています。
▲これがグレーを刷っているローラーです。
ここに、今からオペレーターが青いインキを
手で足していきます。どれくらい足すかは
職人の経験から量ります。
▲ヘラで豪快にインキを盛っていきます。
特色は、言わばオーダーメイドのインキなので、
ボトルならぬインキキープという形で
そのお客様専用の缶に入れて保管されます。
▲これが今回の特色が入っていた缶です。缶にはお客様のお名前が書かれます。
インキを足し終わったので、再び校正を刷ります。
その前に、せっかくですので、ここで印刷機の他の部分もご紹介します。
▲機械の一番端にある、刷るための紙が置かれる所です。
上の写真では、最初の何枚かの試し刷りに使う裏紙が置かれています。
▲ここから紙が機械の中に流れていきます。
▲こちらは機械の反対側の端にある、刷られた紙が出てくる部分です。
白い部分が、出てきた紙の側面です。
そうこうしているうちに、校正の2回目が刷り上がったようです。
やはり紙色の影響はありますが、1回目よりやや黄色味が
抑えられました。
▲色の薄い写真で見ると色の違いがわかりやすくなります。
細い枝の写真、右側が2回目の校正です。
さらにインキ色を調整し、機械の設定上でもインキの
出方を調節して、3回目の校正です。
▲ここまでの3回でそれぞれ使ったインキです。
一番右が3回目に使った色ですが、青を加えることで
より締まった色になっていることがわかります。
上の段右が3回目の校正です。1回目に比べると
かなり色見本に近づきました。
校正だけで見比べても違いがわかります。
最終的に、この3回目の校正をお客様に
見ていただくことになりました。
北浦さん、照井さん、硲さんそれぞれに
校正を発送して、今日の本機校正は終わりです。
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「1冊の写真集が完成するまで」第2弾はここまでです。
第3弾では、今回お送りした校正に
対してお客様からいただいた要望を参考に、
実際に写真集に使う全てのデータを使って
もう一度本機校正を行う様子をお伝えします。
照井壮平さんの写真集「狼煙」特設HPはこちらです。
ぜひチェックしてください。
次回の更新をお楽しみに!
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