印刷職人のしごとばTOPICS

1冊の写真集が完成するまで④

2017.9.20  1冊の写真集が完成するまで 

サンエムカラーが、作家の方と協力して
新しい写真集を作り上げるまでの様子をリアルタイムで
お届けするシリーズ「1冊の写真集が完成するまで」。

今回は、いよいよお客様に写真集本文の
印刷に立ち会っていただく様子をお伝えします。

 


 

前回の記事でお伝えした打ち合わせから4日後。
北浦さん・照井さん・硲さんに、本社から少し離れた
印刷工場へお越しいただきました。


▲工場の2階です。ここで装丁などの打ち合わせもしつつの立会いとなりました。

 

ほどなくして、1階で立会いが始まりました。

今日使われるのは、前回の打ち合わせでいただいた
指示を元に修正を加えたデータから作った刷版です。
修正指示が書かれた校正と見比べ、
思い通りの修正がされているかチェックしていただきます。
(北浦さんが前回の色修正の様子をブログ「みちとおと取材記」に
書いてくださっています。ぜひ、併せてお読みください。)

 

印刷立会いの流れは、
「1台ごとのお客様によるチェック→印刷」の繰り返しです。
精密な印刷を実現するためには
インキの色だけでなく、紙を伸縮させる温度・湿度など、
様々な環境の条件まで考慮しなければなりません。
印刷機の設定も台ごとに変わります。
そのため、1つの台をチェックしていただき、
OKが出ると、その時点の環境が変わらないうちに
1台分だけを刷り切ります。
チェックだけ先に済ませてから全体を一気に印刷する、というわけにはいかないのです。

しばらくチェックをいただき、相談もされた後、
まず1台目には無事にOKがいただけました。


▲OKの証には、お客様直筆のサインを刷り取りに書き込んでいただきます。

1台目の本刷り、スタートです。

 

一つの台が刷りあがるには少し時間がかかるので、
合間を見て2階に上がり、装丁などの確認をします。

書籍の完成のイメージを固めていくのに、校正や
見本の他に使うのが、製本見本である
束見本(つかみほん)です。


▲これが今回の写真集「狼煙」の束見本です。
しっかりと製本されていますが、あくまで製本見本なので
表紙には何も刷られていません。

連載第1回でも書いていたのですが、製本は
コデックス製本を上製本の表紙に貼り合わせるという形態を
使うことになっています。


▲コデックス製本の本文の背です。
背が表紙から離れており、糸で綴って糊で固めた部分が
外に出ています。


▲この背の作りのおかげで、本を手で押さえなくても
綺麗に180度開くのが、コデックス製本の最大の特徴です。
本のノドまで全部見えるので、見開き2ページに渡った
画像がある写真集などに適した製本です。

今日はこの束見本を使って、製本時の見え方の確認をします。
ここで問題になったのは、糸の色でした。

写真からもわかるように、ノドが大きく開くので
綴っている糸まで全部見えます。
上の写真のように、ページによっては画像の中に
黒い糸が走ることになります。
糸は本文の背からも見えるので、色を慎重に
決めなければなりません。

「ここの写真は糸があっても良さそうだけど、
こっちは構図的にもまずいかも」

糸の存在感が特に重要になるページに合わせて、
製本方法の見直しや、レイアウトの変更まで考慮に入れつつ、糸の色を考えます。

黒糸・白糸・グレーの糸が選択肢に上がり、
後ほど糸のサンプルを見ながら詰めていくことになりました。

 

そうこうしているうちに、次の台の印刷が始まったので、
また工場で色の確認です。

機械の駆動音の中、見本も使いながら確認と相談が進みます。

 

ここから色を調整する場合、機械の設定か
インキの色を変えることで対応します。


▲この操作盤では、印刷機からインキが出る量を
部分的に調節できます。

色が命の印刷において、最後の最後までお客様に
追って見ていただける立会いは非常に重要な行程です。
この段階でも、理想の仕上がりに近付くまで手を尽くします。

 

別の印刷機では、並行して表紙の校正が行われていますので、
そちらも確認をいただきます。


▲束見本の表紙と同じ黒い紙です。

校正を見て、表紙に使うインキの色を決めていただきます。


▲画像では分かりにくいですが、左からそれぞれ
グロスニスと黒のインキで熊野古道を表す線が刷られています。

見ていただいた結果、インキは黒に決まりました。

 

見返しの印刷も始まっています。


▲見返しOKの証には硲さんのサインをいただきました。

 

ひと段落したので、またまた2階に上がります。
この繰り返しを、全ての台が刷れるまで繰り返します。

取材はここで終わりますが、この後も引き続き、
立会いは続きました。

 


 

本文、表紙、見返し、製本と、徐々に
パーツが集まってきました。ここからが本番ですので、
引き続き気合いを入れて、完成に向けた調整を進めていきます。

次回は、表紙に施すシルクスクリーン印刷の
確認のため、サンエムカラーを離れて
シルクスクリーン印刷会社からお伝えする予定です。

 

照井壮平さんの写真集「狼煙」特設HPはこちらです。
ぜひチェックしてください。

 

「1冊の写真集が完成するまで」、次の更新をお楽しみに!

 

◯「1冊の写真集が完成するまで ⑤」はコチラから◯