12月7日(木)より、東京・世田谷区のgallery21yo-jにて
作家・池内晶子さんの個展が開催されています。
広い空間に絹糸を張り巡らせる方法で
インスタレーションの作品を生み出される池内さんは、
1994年より同ギャラリーにて個展の開催を続けてこられました。
この度の展覧会に伴い、1994年から2015年にかけての個展の記録を
一冊の図録として刊行されます。
サンエムカラーでは、この記念すべき作品集の
印刷を担当させていただきました。
印刷から装丁、紙の厚みの構成など、作品に呼応するように
繊細で美しい本に仕上がりました。
この作品集のこだわりの一つに、文字の色があります。
上の写真では分かりにくいですが、冒頭から巻末にかけて
作品写真の合間に配されたテキストページの文字は、
ぱっと見てはわからないほどの差で、銀色から銅色へと
少しずつ変色していきます。
会場に展示されている間に、池内さんの作品に使われる絹糸は
空気にさらされて黄変していくそうです。
作品の表情が刻一刻と変化する様子が文字の色によって表現され、
三次元の作品と二次元の作品集が時の流れによりつなぎあわされています。
11月には、池内さんご本人が弊社印刷工場へ
印刷立会いにいらっしゃいました。
▲色味をチェックされる池内晶子さん(右)とデザイナーの小池さん(中央)。
細い絹糸で静かに空間を成立させる池内さんの
作品を最大限表現する繊細な印刷が試されます。
決して色数の多い本ではありませんが、だからこそグレー、赤、青
色の変化をあますところなく捉える印刷が大切です。
▲gallery21yo-jのオーナー・黒田さん(上写真・右)と
編集の櫻井さん(下写真・右)にもご確認いただきました。
▲今回の立会いも無事にOKをいただきました。
身体との親和性が高い絹糸は、柔らかく、切れやすい。床の糸は、1本で繋がっており、糸巻きに巻きつけられたクセを伴い、落下の軌跡となっている。かたちが成立する最小の支持4点で宙づりにした糸は自重と張力のバランスで成り立つ。人が近づけば、糸は揺れ、呼気に含まれる湿気で弛緩し、遠ざかれば、緊張を取り戻す。磁力-地球により生じる磁場、常に一定ではなく、絶え間なく変化している地磁気を基準としての方角、ここでは北西-南東、北東-南西に軸糸を沿わせることによって、建物の内側だけでなく、外側にもまなざしを向けることになるのではないか。この土地の成り立ちや、軸糸の指し示す4つの方向をたどり、そしてそれらに支えられてあるとも考えられる。
(池内さん HPより)
図録で見る表情だけでなく、見る人が近付くことで
形を少しずつ変える糸の姿を、ぜひその目で、会場でお楽しみください。
◯
池内晶子 作品集
著者:池内晶子
仕様:Y190×T280
PUR製本、ドイツ装、特殊帯
定価:3,900円(税込)
◯
会場:gallery21yo-j
2017年12月7日(木)-12月24日(日)
休廊日:月−水曜日
開廊時間:13:00−18:00